採択されたのに減額・否認される実績報告の罠 ──「内定」を「確定」と勘違いしてはいけない理由

補助金申請において、採択通知を受け取った瞬間の安堵と高揚感は格別です。 しかし実務上、ここからが本当の勝負だという認識は、まだ十分に共有されていません。
実際の現場では、 「採択されたのに補助金が大幅に減額された」 「最悪、1円も支払われなかった」 というケースが少なからず発生しています。
原因はほぼ共通しています。 事業完了後に行う「実績報告」で、制度の要求を満たせなかったことです。
「採択された金額は、原則そのままもらえる」 この思い込みを捨てなければなりません。 なぜ、採択後に補助金が削られ、否認されるのか。その正体を整理します。
1. 採択は「満額支給」の約束ではない
まず押さえるべき大前提があります。 採択通知に記載された金額は、確定額ではありません。
あれはあくまで 「この事業計画であれば、補助金交付の候補者として認めます」 という交付候補額です。
実際の補助金額は、 事業完了後に提出する実績報告書と、 それに対する事務局の確定検査を経て初めて決まります。
その過程で、
- 補助対象外と判断された経費
- 価格の妥当性が説明できない支出
- 計画に対して過剰と見なされた内容
は、容赦なく減額・除外されます。
採択はゴールではなく、 「精査のスタートライン」に立ったにすぎません。
2. 実績報告で否認される典型パターン
実績報告で見られているのは、 「本当にお金を使ったか」ではありません。 「正しく、証明できる形で使ったか」です。
証拠書類(エビデンス)の不備
見積書、発注書、納品書、請求書、振込証明。 この一連の書類がすべて揃い、時系列が整合している必要があります。
ある事業者は、納品書の日付が発注書より前になっていたために、その経費全額を否認されました。「実際には正しい順序で進めていた。単なる記載ミスだ」と説明しても、書類上の矛盾は覆せません。
どれか一つでも欠ければ、あるいは整合しなければ、その経費は原則認められません。
銀行振込以外の支払い
支払い方法は原則として銀行振込です。 現金払い、手形決済、相殺処理など、 客観的に確認できない支出は補助対象外になります。
事前承認のない内容変更
事業場所の変更、設備仕様の変更、数量変更などを、 事務局への相談や承認なしに行うと、その経費は否認対象です。
「軽微だと思った」は通用しません。 判断基準を持っているのは、常に事務局です。
3. 消費税という”あとから効いてくる罠”
課税事業者にとって、見落としがちなのが消費税です。
補助対象経費に含まれる消費税分は、原則として補助金の対象外となります。
さらに厄介なのは、事業完了後の話です。 消費税の確定申告で仕入税額控除を行い還付を受けた場合、その還付額に相当する補助金の返還を求められることがあります。
「報告時点では問題なかった」では済まない。 補助金と消費税の関係は、申請時だけでなく、その後の税務処理まで視野に入れておく必要があります。
4. 「目標未達成」も減額・否認の対象になる
補助金は、単に経費を使えば終わりではありません。 計画した成果が出ているかも評価対象です。
- 事業完了期限までに完了していない
- 計画書に記載した数値目標との乖離が大きい
- 成果と支出の関係が曖昧
このような場合、 補助金の減額、場合によっては不交付となる可能性があります。
実績報告書では、 「何を達成し、なぜそう言えるのか」 を定量・定性の両面で説明することが求められます。 計画書に書いた目標は、そのまま自分を縛る基準になる。この認識を持って申請段階から数字を設定すべきです。
5. 実績報告を乗り切るための鉄則
実績報告で事故を起こさないための基本は、次の3点です。
- 証憑類を見積段階から時系列で整理する
- 計画と異なる動きが出たら、必ず事前に事務局へ相談する
- 実地検査や会計検査を前提に、帳簿と現物を保存する(原則5年間)
実績報告は、 「あとでまとめてやる作業」ではありません。 事業開始時点から始まっているプロセスです。
まとめ
補助金は、 採択された瞬間に安心した人から取りこぼしていきます。
本当に問われているのは、 「採択させる力」ではなく、 ルールを理解し、報告まで完遂する力です。
実績報告は、事務局の視点に立ち、 一点の曇りもない説明ができて初めて通過します。
補助金は”もらえる制度”ではありません。 取り切った人だけが残る制度です。
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✍️ この記事を書いた人
北條竜太郎|株式会社アカネサス 代表取締役
老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、
食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。
補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。
【会社実績】
・支援プロジェクト総事業費:363億円
・補助金採択額:126.5億円
・北海道から沖縄まで全国対応
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