【要件誤解】「うちは当てはまるはず」が一番危険──省庁の目的とズレた瞬間に落ちる

補助金申請で落ちる会社に共通するのが、 “自社は対象に当てはまるはず”という願望ベースの要件解釈。 食品工場は真面目に書いているつもりでも、行政から見るとズレている。
とくに多いのが、 「経産省向きの投資を農水省に出す」 「農水省向きの投資を経産省に出す」 という”逆走申請”。
行政は優しいが、要件を外した申請には容赦がない。 審査の世界では、 「目的を理解していない会社は落とす」 が暗黙の鉄則だ。
“食品工場=補助金に合うはず”という勘違い
食品工場側がよく口にするフレーズがある。
「食品工場だから農水省の補助金はいけるでしょ」 「設備投資だからものづくり補助金もいけるはず」
……これは半分正しいが、半分まちがっている。
補助金は”設備投資の種類”ではなく、 “その投資が省庁の目的に合致しているか” で決まる。
同じ設備でも、省庁ごとに評価がまったく違う。
経産省と農水省──同じ「設備投資支援」でも目的は真逆
どんな申請書も、この違いを理解していないとズレる。
経産省(ものづくり・大規模投資系)
- 生産性向上
- 高付加価値化
- 革新性
- 先端技術
主語は「国の産業競争力」。
農林水産省(食品・地域系)
- 国産原料の活用
- 食品供給体制の強化
- 地域連携
- 食料安全保障
主語は「地域と食の持続性」。
つまり、 どちらも”設備投資”を支援するが、“目的”が根本的に違う。
この目的を誤ると、どれだけ立派な計画も審査の机で弾かれる。
よくある不採択パターン①
【冷凍ラインを”ものづくり補助金”で申請して撃沈】
食品メーカーA社の例。
- 新しい冷凍ラインを導入したい
- 生産能力が上がる
- 需要も増えている
一見よさそうだが、経産省は冷凍ラインを”革新”と見ない。 経産省の審査は”ジャンプ”が好きで、”延長線上の改善”が嫌いだ。
A社は審査でこう判断されて落ちた。 「既存技術の延長であり、革新的とは言えない。」
同じ案件でも、農水省なら”地域の供給力アップ”として評価される可能性がある。
よくある不採択パターン②
【IoT導入を農水省に出して落ちる】
食品メーカーB社のケース。
- IoT温度管理
- 設備の見える化
- 効率化・省人化
技術としては素晴らしい。しかし農水省の主語は違う。
農水省が知りたいのは、 「この投資が国産原料・地域供給・食品連携にどうつながるか」 であって、IoTの便利さではない。
B社は審査でこう判断されて落ちた。 「地域連携の意義が弱く、供給体制への貢献が見えない。」
要件誤解の本質──共通する3つのクセ
要件を誤解する会社の申請書には、決まったクセがある。
① 目的語が省庁の主語になっていない
- 農水省向けなのに「DX」「効率化」を強調
- 経産省向けなのに「地域波及」「原料調達」を強調
→ 完全に逆走している
② 設備の理由が”社内都合”のまま
「老朽化したから」 「増産したいから」 「更新時期だから」
→ 補助金の目的とは無関係
③ 国策キーワードが丸ごと抜けている
- 農水省: 国産原料、地域供給、食品連携、衛生体制
- 経産省: 革新性、生産性、DX、高度化
→ 一つも書いていない申請は”理解不足”と判断される
要件の誤解は、構想が浅いより致命的だ。
行政は”序盤で”要件理解の有無を見抜いている
審査担当は、申請書の最初の部分で次の3点を判断する。
- 省庁の目的を理解しているか
- 要件と事業の接点を押さえているか
- 設備投資の”社会的意義”があるか
ズレていると、残りは流し読みされる。 ここで勝負がほぼ決まる。
どうすれば”要件を理解した申請書”になるのか?
対策は難しくないが、徹底できる会社は少ない。
1. 省庁の目的を主語にする
自社のやりたいことではなく、 「国がやりたいこと × 自社の投資」の重なり部分を書く。
NG例: 「冷凍ラインで生産能力を2倍にする」 OK例: 「地域の冷凍食品供給体制を強化し、国産原料の加工能力を拡大する」
2. 自社の言葉で”要件を翻訳”して書く
行政のキーワードをそのまま並べるのではなく、 担当者自身の言葉で噛み砕いて説明する。
これだけで審査の印象が激変する。
3. 事前に行政(県担当)へ相談する
要件のズレは相談で気づける。 ただし「どう直すか」は自社で考える必要がある。
相談せずに落ちる会社は”自爆パターン”。
まとめ
補助金申請でもっとも罪深いのは、「省庁の目的を誤解したまま書き進めること」。
このズレだけで、計画の9割は台無しになる。
そして食品工場は”設備投資=全部補助対象ぽい”という勘違いが起こりやすく、 その結果、申請ジャンルの選択ミスが大量に発生している。
補助金は、 “どれを使うか”ではなく、”どれに合わせて書くか”が9割。
これを理解している企業だけが、採択ラインに乗る。
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✍️ この記事を書いた人
北條竜太郎|株式会社アカネサス 代表取締役
老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、
食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。
補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。
【会社実績】
・支援プロジェクト総事業費:363億円
・補助金採択額:126.5億円
・北海道から沖縄まで全国対応
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