食品工場の補助金申請が落ちる理由|構想の浅さという致命傷

「増産します」「老朽設備を更新します」——この言葉だけで申請書を作る企業は、まず通らない。
食品工場の補助金申請が不採択になったとき、よく聞かれる言葉がある。
「なんで落ちたんですかね。うちは真面目に書きましたけど」
残念ながら、真面目に書くだけでは通らない。
行政が見ているのは”真面目さ”ではなく、“構造”だ。
食品工場で最も多い不採択理由——それが「構想の浅さ」である。
「増産したいです」は、補助金的には”ゼロ点回答”
申請書の書き出しがこれだと、行政はすでに眉間にシワを寄せている。
- 「需要があるので、増産したいです」
- 「老朽設備を更新したいです」
この2つ、食品工場の”あるある”なのだが、行政は心の中でこう思っている。
「それ、あなたの会社の事情ですよね?」
行政が本当に知りたいのは、次のことだ。
「増産の結果、地域の供給体制がどう安定するのか?」
設備を新しくしたい気持ちはわかる。
でもそれは企業の”修繕工事”であって、国が税金を投入する理由にはならない。
食品工場で頻発する「設備のスペックだけ神レベル」問題
食品工場の担当者は、設備の話になるとやたら饒舌になる。
- 冷凍機の能力は◯kWで…
- 充填機の処理量は◯kg/hで…
- ボイラーは蒸気量が◯tで…
行政から見える景色は、「機械カタログの朗読会」である。
必要なのはスペックではなく、「そのスペックで何が解決されるか」だ。
実際、構想や全体像の説明が弱い申請は、落ちる可能性が高くなる。
行政が知りたいのは「供給体制がどう強くなるか」
農水省補助金の審査基準は、極めてシンプルだ。次の4点に集約される。
- 原料調達の安定性(JAや農家との連携は?)
- 加工の安定性(ラインのボトルネックはどこ?)
- 衛生・規格対応(HACCP・FSSCなど)
- 地域への供給体制貢献(災害時含む)
つまり、供給モデルのロジックが書けていない会社は、自動的に落ちる。 増産の数字を1.5倍、2倍と書いても、原料と販路の裏付けがなければ「却下」である。
【事例】希望で作った”妄想の数字”がバレて落ちた会社
実際にあった食品メーカーのケースを紹介しよう。
状況
「需要が伸びてるので増産します!」と申請。
計画書には、
- 生産量:2倍
- 売上:2.5倍
- 設備:最新鋭
……と、非常に華やかに書かれていた。
行政の指摘
審査結果には、こう書かれていた。
「この増産計画の実現根拠が確認できません」
冷静である。そして致命的である。
なぜ落ちたか
- 過去3年の出荷データなし
- 顧客からの増産依頼の裏付けなし
- 新規販路の商談記録なし
- JAとの調達協議なし
要するに、”希望で作られた数字”だった。
行政は希望が嫌いなのではない。“根拠のない希望”を嫌うのだ。
構想が浅い申請書に共通する「3つの欠陥」
① 原料→加工→販路の流れが描けていない
これは食品工場の”生命線”だ。
どこか1つが弱いと、行政は「実現しない」と判断する。
② 設備スペックと供給計画がリンクしていない
よくあるのが、
- 設備能力:1.5倍
- 売上:2.5倍
のように、数字が会話していない申請書。
「数字の整合性」は、最大の論点である。
③ JA・地域との接続が弱い
農水省補助金において、連携は”飾り”ではなく”審査基準そのもの”だ。
それが薄い申請は、行政の机に載った瞬間に軽く扱われる。
どう書けば「構想が深い」と行政に伝わるのか?
1. 数字の裏付けを”冷静に”示す
- 過去の出荷実績
- 顧客の発注見込みメール
- 商談記録
- 市場データ
数字が実在すると、それだけで申請書の”重み”が変わる。
2. 供給体制の改善を構造で説明する
- ボトルネック工程の解消
- FSSC/HACCPの強化
- 原料調達の安定(JAの協力)
行政は”設備の未来”ではなく、”供給の未来”を見ている。
3. 国の目的と自社の投資を紐づける
農水省は地域・供給・食品連携が目的だ。
ここにぴったり当てていくと、申請の説得力が大きく高まる。
まとめ:構想が浅い企業は「カタログ申請」で落ちる
補助金申請は、設備の話をして通るほど甘くない。
行政が見たいのは——
“設備”ではなく、”供給体制という生態系がどう変わるのか”
食品工場は、本来補助金と最も相性がいい業種だ。
だからこそ、構想を深めない会社はもったいない結果になってしまう。
申請書を書く前に、まず問いかけてほしい。
「この投資で、地域の食の供給体制はどう変わるのか?」
その答えが明確になったとき、補助金申請は初めて”通る申請”になる。
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✍️ この記事を書いた人
北條竜太郎|株式会社アカネサス 代表取締役
老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、
食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。
補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。
【会社実績】
・支援プロジェクト総事業費:363億円
・補助金採択額:126.5億円
・北海道から沖縄まで全国対応
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