6次産業化・直売の補助金講座【第1回】6次産業化の補助金|加工・直売所・農家レストランに使える制度と進め方【2026】


うちの野菜、加工してブランドにしたい。でも補助金って大企業向けでしょ?



直売所も農家レストランもやってみたい。制度がバラバラで、どれから見ればいいの?
農産物をそのまま出荷するだけでなく、加工して、直売して、さらに店で食べてもらう。この「6次産業化」は、単価を上げて手取りを守るための有力な一手です。ただ、いざ調べてみると制度名が入り乱れていて、どれが自分向けなのかが見えづらい。ここでつまずく生産者・産地は、少なくありません。
この記事では、6次産業化とは何かを短く確認したうえで、「加工・直売・レストラン・販促」の目的別に使える制度を一枚の表で見比べ、主役の制度を掘り下げ、最後に認定計画から交付までの道筋を整理します。産地と組む食品メーカーの方も、生産者側が使える制度を知っておくと連携を組み立てやすくなります。
- 「6次産業化(1次=生産・2次=加工・3次=販売を一体で行い、付加価値を生む取組)」で使える補助金を、加工/直売/農家レストラン/販促の目的別に整理できる
- 主役の制度「地域資源活用価値創出対策」(農山漁村振興交付金に置かれたメニューのひとつ/旧・食料産業・6次産業化交付金の役割を引き継ぐ枠組み)について、補助率・上限額・対象と、活用に必要な「認定計画」の位置づけがわかる
- 小さく試すなら持続化補助金、本格化したら交付金のソフト(上限500万円)→ハード(上限1〜2億円)と、規模に応じた「入口の選び方」がわかる
- 産地と組む食品メーカーが、生産者側の制度をどう一緒に使えばよいかの見取り図が持てる
それでは、「6次産業化とは何か」というところから見ていきましょう。
1. 6次産業化とは?なぜ補助金があるのか
1-1. 「1次×2次×3次」で付加価値を取り戻す発想
6次産業化とは、農林漁業者(1次産業)が加工(2次産業)や販売・サービス(3次産業)まで踏み込み、一体化して所得や雇用を生み出す取組です。「6」は1+2+3、あるいは1×2×3に由来します。ねらいは、原料のまま出荷すれば他社に渡ってしまう「加工益」「販売益」を、産地側に取り戻すことにあります。
国がここに補助金を用意しているのは、農業者の所得向上と地域の雇用、そして地域資源の活用が政策目標に掲げられているからです。裏を返せば、補助金の審査では「設備を買う口実」ではなく「所得と販路をどう伸ばすか」が問われる、ということでもあります。
では、その6次産業化を、この記事ではどう切り分けて扱うのかを整理しておきます。
1-2. この記事で扱う4つの目的
この記事では、生産者が踏み出しやすい順に、加工(原料を商品にする)、直売(自分たちで売り場を持つ)、農家レストラン(食べる体験まで提供する)、販促(できた商品を知ってもらう)の4つの目的を扱います。直売所・農産物加工・農家レストランは独立した記事にはせず、本記事の「節」として横断的に整理します。
💡 補助金は「機械が欲しい」からではなく「所得と販路をどう伸ばすか」で選ぶと外しません。まず目的(加工/直売/レストラン/販促)を決めて、そこに制度を当てていくのが近道です。
それでは、4つの目的ごとに、候補となる制度を並べてみましょう。
2. 目的別|使える制度の早見表
2-1. 目的から制度に降りていく早見表
以下の表で、4つの目的と第一候補の制度を整理しました。当たりをつけるための表として使ってください。
| 目的 | 第一候補の制度と使いどころ |
|---|---|
| 加工(商品化・加工場) | 農山漁村振興交付金・地域資源活用価値創出対策(加工・直売施設の整備、新商品開発)。大型の加工場も同じ整備事業の枠内(上限1億円・条件を満たせば2億円) |
| 直売(売り場を持つ) | 同・価値創出対策(直売施設の整備+売上向上のソフト支援)。道の駅級の大型直売所は次回で解説 |
| 農家レストラン | 同・価値創出対策の「定住促進・交流対策型」が本命(活性化計画が前提)。農泊と絡めるなら、同じ交付金の農泊推進型 |
| 販促(知ってもらう・小さく試す) | 小規模事業者持続化補助金(販路開拓・小さな直売)。新商品ラインなどの設備投資は民間系(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金等)も選択肢 |
※補助率・上限額は年度・自治体・公募枠によって変わります。申請前に必ず最新の要綱・公募要領でご確認ください。
表を見るとわかるとおり、加工・直売・レストランの「入口」は、多くの場合ひとつの制度に集約されます。それが次の章で扱う「地域資源活用価値創出対策」です。
これは平成28年度から続く「農山漁村振興交付金」のメニューのひとつです。令和4年度に、かつての「食料産業・6次産業化交付金」(令和3年度まで)の役割を引き継ぐ形で「農山漁村発イノベーション対策」として再編され、令和7年度から現在の名称になりました。古い解説記事は旧名のままのことが多いのでご注意ください。
3. 主役の制度|農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策)
3-1. 制度のかたち(ソフトとハード)
地域資源活用価値創出対策は、いまの6次産業化支援の中心にある枠組みです。国から都道府県への要望調査(令和8年度当初予算では2026年1月13日〜2月12日)を経て申請するのが基本の流れで、募集の時期や運用は都道府県によって差が出ます。
中身は大きく2つです。新商品開発・販路開拓・直売所の売上向上などを支える「推進事業(ソフト=創出支援型)」と、加工・直売施設の整備を支える「整備事業(ハード=産業支援型)」。さらに整備事業には、都道府県・市町村が計画主体となる「定住促進・交流対策型」もあります。
補助率と上限は、以下の表のとおりです。
| 区分 | 補助率・上限(実施要領で確認) |
|---|---|
| 推進事業(ソフト・創出支援型) | 1/2等(取組により定額のものもあり)。上限は事業期間(上限2年)を通じて500万円 |
| 整備事業(ハード・産業支援型) | 3/10以内。ただし①中山間地農業ルネッサンス(地域別農業振興計画)に基づく取組、②市町村戦略(市町村が6次産業化の推進について策定する戦略)に基づく取組、③障害者等の新規雇用を計画に位置づける取組のいずれかに当たれば1/2以内。事業期間は1年 |
| ハードの補助上限 | 原則1億円。BtoB取引5割超+HACCPに関する第三者認証取得を計画に明記した一次加工品製造等は2億円。ただし1億円を超える上乗せ分は、その規格に対応するために不可欠な機械のかかり増し経費に限られる |
| 整備事業の前提 | 融資主体型=交付対象経費に充てる制度資金等の融資・出資を受けて実施することが要件(対象となる金融機関等は実施要領の定めによる) |
| 整備事業(ハード・定住促進・交流対策型) | 1/2等・上限4億円(事業期間は上限3年)。計画主体は都道府県・市町村で、農山漁村活性化法に基づく活性化計画が前提。直売所・加工所・農家レストラン等が対象 |
※実施要領ベースの数値です。年度によって変わるため、申請前に最新の実施要領でご確認ください。
ここで効いてくるのが、補助率が「3/10から1/2に上がる条件」です。計画の段階で市町村と話を通しておけるかどうかが、自己負担額を大きく左右します。
ただし、この交付金は「思い立ってすぐ申請」とはいきません。その前に必要になるのが、認定を受けた計画です。
3-2. 使う前提|「認定計画」が入口
この交付金は、計画の裏づけがないと使えません。整備事業(ハード)では、①六次産業化・地産地消法(6次産業化を後押しする法律)に基づく「認定総合化事業計画」、②農商工等連携促進法に基づく「認定農商工等連携事業計画」(農業者と商工業者が組んで新商品・販路をつくる計画の認定)、③都道府県または市町村の戦略——このいずれかに基づく事業計画が必要です。
①②は国の認定を取るルート、③は自治体の戦略に載せてもらうルートです。総合化事業計画の認定は農林水産大臣、申請窓口は地方農政局等(北海道農政事務所・沖縄総合事務局を含む)です。
つまり「機械を買う前に、まず計画の認定」が基本の動線です。ここは食品メーカーとの連携が効きます。農業者が単独で描くより、加工と販路のノウハウを持つメーカーと組んだ「農商工連携」の計画のほうが、実現性も採択の説得力も上がります。
💡 交付金の「鍵」は認定計画。設備の見積もりより先に、「誰と組んで、何を、どこに売るか」を計画に落とし込むこと。メーカーと産地が握れた計画は、連携型として強くなります。
入口が見えたところで、ここからは目的別に中身を見ていきます。
3-3. 加工|原料を「商品」に変える
加工に踏み込むなら、この交付金の整備事業が第一候補です。加工機械や加工施設の整備に加えて、新商品開発(推進事業)まで一体で組めます。加工では衛生管理が要になるため、HACCP(食品の安全を守る国際的な衛生管理の手法)に対応した設備と動線を最初から織り込んでおくと、販路開拓の段階でつまずきません。
なお、量産ラインを構える大型の加工場も、同じ整備事業の枠内で狙えます。上限額と2億円に広げる条件、そこに付く限定は前掲の表のとおりです。
3-4. 直売|自分たちの売り場を持つ
直売施設の整備も、同じ交付金の対象です。さらに推進事業には「直売所の売上向上に向けた多様な取組」が明記されており、建物をつくるだけでなく、売り方の改善(品揃え、集客、データ活用など)まで支援の射程に入ります。
ただし、道の駅級の大型直売所となると規模も要件も変わり、別の制度設計が中心になります。この大型直売所は、本講座の第2回でまとめて扱います。なお、市町村などが計画主体となって整備する直売所は、次に触れる「定住促進・交流対策型」が入口になります。
3-5. 農家レストラン|「食べる体験」まで届ける
農家レストランは、同じ地域資源活用価値創出対策の「定住促進・交流対策型」が本命です。農林水産省も、集出荷・貯蔵・加工施設や直売所、農家レストランの整備を交付対象に挙げています。
ただし、入口は産業支援型と別です。計画主体は都道府県または市町村で、農山漁村活性化法に基づく「活性化計画」への位置づけが必要。市町村と早い段階で握れるかが勝負どころです。
また、この交付金はインバウンド(訪日外国人)を含む観光・食関連消費の拡大をねらいとしており、観光と絡めた設計と相性の良い分野です。宿泊や体験まで広げるなら、同じ交付金の農泊推進型も選択肢。補助対象と要件は自治体差が大きいため、最新の要綱でご確認ください。
ここまでは、本格的な施設整備の話でした。次は、もっと小さく始めたい場合の選択肢を見ていきます。
4. 販促・小さく試す|持続化補助金と民間系
4-1. 小さな販路開拓は「持続化補助金」
「いきなり施設整備は重い。まずは商品を知ってもらいたい」という段階には、小規模事業者持続化補助金が向いています。販路開拓(チラシ、ECサイト、ラベル・パッケージ、展示会出展、小規模な直売の什器など)に使え、農業者も小規模事業者として対象になり得ます。
補助率と上限は、以下の表のとおりです。
| 項目 | 内容(最新の公募要領で要確認) |
|---|---|
| 補助率 | 2/3 |
| 通常枠の上限 | 50万円。インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方を満たせば最大250万円 |
| 向いている使い方 | 販路開拓・広報・小さな直売の立ち上げ、6次化商品のテスト販売 |
※公募回ごとに枠や特例の内容が変わります。申請前に最新の公募要領でご確認ください。
金額は大きくありませんが、「まず売ってみて手応えをつかむ」段階にはちょうど良い規模です。ここで実績をつくってから交付金の整備事業へ進む、という段取りも現実的です。
4-2. 設備投資を民間系で|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
新しい加工ラインなどの設備投資は、経産省系(中小企業向け)で狙う手もあります。代表格は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金。「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が令和8年度に統合された制度で、令和8年6月29日に第1回公募が開始。旧名での検索は古い情報にあたるのでご注意を。
統合前にも、事業再構築補助金から新事業進出補助金への再編(令和6年度補正)があるなど、枠・上限・要件は年度で動き続けています。最新の公募要領でご確認ください。
判断の目安はシンプル。地域資源の活用や農業政策の色が濃い取組は農水省系(交付金)、汎用的な設備投資・新事業展開は経産省系です。
使える制度が見えたところで、最後に動き方の順番を確認しておきましょう。
5. 進め方|計画から交付までの道筋
5-1. 計画から交付までの5ステップ
制度が違っても、通る順番はおおむね共通です。以下の表で、5つのステップを順に整理しました。
| ステップ | やること |
|---|---|
| ① 目的を決める | 加工/直売/レストラン/販促のどれか、規模はどこまでかを固める |
| ② 計画を作る | 総合化事業計画・農商工連携計画の認定を取りにいく(交付金の入口)。ここで組む相手(メーカー等)を決める |
| ③ 制度を当てる | 目的・規模に合う制度を選ぶ。市町村戦略に位置づけて補助率の上乗せを狙う |
| ④ 窓口に相談 | 交付金は自治体の窓口が中心。募集時期を外さないよう早めに相談する |
| ⑤ 申請・交付・実行 | 交付決定後に発注・整備。あとから成果目標(売上・所得等)の達成が問われる |
大型の加工場や直売所を最初から構想している場合も、入口は同じ価値創出対策の整備事業です。道の駅のように機能が複合する大型拠点になると制度も省庁をまたぐため、本講座の第2回(道の駅)で扱います。まずは「小さく試す→計画で認定を取る→規模に合わせてソフトからハードへ段を上げる」の順で進めましょう。
💡 迷ったら規模で分けるのが実務的です。テスト=持続化補助金(2/3・上限50万円)、ソフトの本格化=価値創出対策の推進事業(1/2・上限500万円)、施設整備=同・整備事業(3/10・条件で1/2・上限1〜2億円)。入口さえ間違えなければ、あとは計画の中身で勝負できます。
ここまでの整理を、1枚の図にまとめました。


まとめ
6次産業化の補助金は、制度名から追いかけると迷子になります。「加工・直売・レストラン・販促」のどれをやりたいのかを先に決め、そこから制度に降りていくのが近道です。
この記事のポイントを整理します。
- 6次産業化の入口(加工・直売・農家レストラン)は、多くの場合「農山漁村振興交付金」のメニューである「地域資源活用価値創出対策」(旧・食料産業・6次産業化交付金の役割を引き継ぐ枠組み)に集約される
- 補助率はソフト1/2(上限500万円)・ハード3/10が基本。市町村戦略等に位置づくとハードも1/2に上乗せされる(上限1億円・条件で2億円)
- 交付金の「鍵」は認定計画(総合化事業計画・農商工連携計画)。設備の前にまず計画を認定してもらうのが基本動線で、食品メーカーとの連携型の計画は説得力が高い
- 小さく試すなら持続化補助金(補助率2/3・通常枠上限50万円)、本格化したら同じ交付金の中でソフト(500万円)→ハード(1〜2億円)へ段を上げる
- 整備事業は融資主体型。金融機関等の融資・出資とセットで組む必要がある
気になる点があれば、記事末尾の無料診断もぜひご活用ください。
第2回:道の駅 補助金|整備に使える制度と進め方【2026】
次回は「道の駅・大型直売所の補助金」を扱います。今回さらりと触れた大規模な直売・交流拠点の整備は、別の制度設計が中心になります。数億円規模の施設整備について、補助率・上限・地域協議会のつくり方まで、産地とメーカーが組んで狙うための実務を掘り下げます。
▶ 【第1回】:6次産業化の補助金|加工・直売所・農家レストランに使える制度と進め方【2026】 ◀今ここ
【第2回】:道の駅 補助金|整備に使える制度と進め方【2026】








