【食品工場 補助金の教科書(プロセス編)第1回】ものづくり補助金と省力化補助金、どっちを使う?|工程別の判断基準


設備投資を進めたいけれど、ものづくり補助金と省力化補助金、どちらを選べばいいんだろう?
――そんなご相談を、最近よくいただきます。
結論からお伝えすると、食品メーカーの設備投資では、「どの工程で・何をしたいのか」によって、向いている補助金が分かれます。
このシリーズでは、食品工場で活用できる補助金の選び方、申請書の書き方、また補助金プロジェクトを成功させる社内体制の作り方等、補助金事業を稼働させるためのプロセスについて全5回にわたって解説していきます。第1回のこの記事では、食品工場の工程ごとに、よく知られている「ものづくり補助金」と「省力化補助金」をどう使い分ければいいのかを説明します。「その名称は聞いたことがあるけど…」という方にもわかりやすくそれぞれの概要をご案内します!
いきなり工程ごとの解説に入る前に、まずは要点を先にお伝えします。
▶ ものづくり補助金:工程そのものを「新しい商売の柱(新ビジネス)」に育てるための投資
▶ 省力化補助金:今ある工程の人数・時間・残業を、目に見える形でグッと減らすための投資
(※ものづくり補助金:令和8年度より『新事業進出・ものづくり補助金』に統合予定)
さらに詳しく知りたい方のために、この記事で取り上げる概要をご案内します。
- 2つの補助金は何が違うのか(目的・補助率・上限額の比較)
- 省力化補助金にある「カタログ型」と「一般型」、どちらを選ぶべきか
- 食品工場の7つの工程ごとに、どちらの補助金が向いているかの判断基準
- 自社の設備投資はどちらが有利か、その場で診断できるチェックリスト
- 【事例】冷凍惣菜メーカーと製パン会社が、それぞれどちらで採択されたのか
- 申請でつまずきやすい失敗パターンと、採択されるためのコツ
それではまず、「この2つの補助金、そもそも何が違うのか」を確認していきましょう。
1. ものづくり補助金と省力化補助金の違い
両者の違いは、大きく3つの観点から整理できます。「目的」「補助率と上限額」「省力化補助金の中にある2つのタイプ」――この順番で見ていきます。
目的の違い
それぞれの補助金が何を狙っているのか、食品メーカーでよくある活用例とあわせて見比べてみます。
| ものづくり補助金(高付加価値化枠) | 省力化補助金(一般型) |
|---|---|
| 【狙い】 新製品・新サービス・新しい生産方式によって、商品の付加価値を高める | 【狙い】 検品・梱包・搬送の工程を省人化(より少ない人数で運営)・省力化(作業の手間削減)し、人手不足の解消と賃上げにつなげる |
| 【食品メーカー例】 新しい冷凍惣菜ブランド用ライン 高付加価値スイーツ向け新ライン 輸出向けの食品衛生管理手法(HACCP)対応ライン | 【食品メーカー例】 既存ラインの自動包装機 段ボール詰めロボット パレタイザー・検査機 |
補助率・上限額の比較
次は、お金まわりの条件です。補助率(国がいくら出してくれるか)・補助上限額(もらえる最大金額)・対象経費(何に使えるか)・審査の軸(何が評価されるか)の4点を表にまとめました。
| 項目 | ものづくり補助金 | 省力化補助金(一般型) |
|---|---|---|
| 補助率 | 中小企業は1/2、小規模・再生事業者は2/3 (低賃金で働く従業員の割合が高い事業者に適用される最低賃金引上げ特例で、中小企業も2/3) | 1/2〜2/3 (投資額1,500万円を超える分は1/3) |
| 補助上限額 | 750万〜2,500万円 (従業員数によって金額が変わる) | 最大1億円クラス (規模の大きい投資をしたい会社にとって有利) |
| 対象経費 | 機械装置+システム構築+クラウド利用料+専門家費用等 (オーダーメイドのライン構築や、「デジタル化(DX)」による業務改革も対象) | IoT機器やロボットなど、省力化に役立つ設備 (人数削減や作業時間の削減効果が、はっきり示せる設備) |
| 審査の軸 | 「事業としてどれだけ新しいか」「付加価値・売上・利益がどれくらい伸びるか」 | 「何人分・何時間分の省人化になるか」「賃上げにどう結びつくか」 |
省力化補助金の「カタログ型」と「一般型」
省力化補助金には、大きく分けて2タイプがあります。あらかじめ用意されたリストの中から機械を選ぶ「カタログ型」と、自社向けにカスタマイズした機械にも対応する「一般型」です。食品メーカーにとってどちらを選ぶかは、かなり大きな判断ポイントになります。
対象範囲、特徴の点でそれぞれのタイプを整理しました。
| カタログ型 | 一般型 |
|---|---|
| 【対象】 カタログに載っている既製品 | 【対象】 オーダーメイド・カスタマイズも可 |
| 【特徴】 申請書類が比較的シンプル スピードを優先して進められる 販売店と共同で申請する | 【特徴】 自社向けに個別設計したラインの構築も対象 上限額が大きい(最大1億円) 省人化の目標値(KPI/目標達成度を測る指標)を明確に示すことが必須 |
ただし、カタログ型を選ぶ前に、知っておくべき注意点があります。
現状、カタログに載っている機械の種類はまだ十分に揃っているとは言えません。「自社が本当にほしい機種」や「今のラインとの相性が良い機種」が見つからない、というケースが少なくありません。
そのため、目の前の投資はものづくり補助金か省力化の「一般型」で現実的に組み立て、次の設備更新のタイミングで「カタログ型」も検討する――この二段構えで進めるのが現実的だと思われます。
ここまでで2つの補助金の基本的な違いを整理しました。続いて、実際の現場の工程ごとに「どちらの補助金を使うべきか」を見ていきましょう。
2.【工程別】どちらを使うべきかの判断基準
食品工場の工程は、原料を受け入れるところから最終的に出荷するところまで、大きく7つに分けられます。工程ごとに「ものづくり補助金が向くケース」「省力化補助金が向くケース」を整理していきます。
工程一つずつ、典型的な設備の例とあわせて見ていくことにしましょう。
① 原料受入・前処理工程
【典型の設備投資】 自動で計量する機械、原料を洗ったり選別したりする機械、原料を運ぶコンベアなど
▶ ものづくり補助金向き:これまで使っていなかった新しい原料・規格で新商品をつくりたいときの設備投資
▶ 省力化補助金向き:今までどおりの原料を、もっと少ない人数で扱えるようにしたいとき(袋開け・投入・計量にかかる人数を減らしたい)
② 調理・加熱・冷却工程
【典型の設備投資】 自動で炒める機械や真空釜、蒸気で連続加熱するスチームトンネル、急速冷却装置(ブラストチラー)、急速冷凍機(ショックフリーザー)など
▶ ものづくり補助金向き:新しい調理法や新仕様(冷凍弁当、圧力をかけて高温で殺菌するレトルト加工、長期保存対応など)で、付加価値の高い商品をつくりたいとき
▶ 省力化補助金向き:今ある惣菜の段取り時間・加熱時間・冷却時間を短くして、人手と残業を減らしたいとき
③ 充填・成形工程
【典型の設備投資】 中身を自動で詰める充填機、形を作る成形機、トレーを自動でセットする機械など
▶ ものづくり補助金向き:新しい形や、注ぎ口付きの袋(スパウトパウチ)・個包装といった新しい包装で、商品単価を上げたいときや新しい販売先を開拓したいとき
▶ 省力化補助金向き:同じ製品を、今より少ない人数・短い時間で詰めたいとき(例:4人→2人)
④ 急速冷凍・レトルト・殺菌工程
【典型の設備投資】 急速冷凍機(ショック式・トンネル式・スパイラル式)、レトルト釜、殺菌トンネルなど
▶ ものづくり補助金向き:冷凍食品やレトルトの市場、あるいは輸出向けに、新しいラインや新ブランドを立ち上げたいとき
▶ 省力化補助金向き:今ある冷凍品の処理能力を上げて、残業や夜勤を減らしたいとき(※この工程は投資金額が大きいので、両方の補助金で試算したうえで決めるのがおすすめ)
⑤ 包装・検査・表示工程 ★省力化補助金の「ド本命」
【典型の設備投資】 自動包装機(ピロー、トレーシーラー)、箱詰め装置、金属検出機・X線検査機、ラベラーなど
▶ ものづくり補助金向き:高級感のある包装に変えたりデザインを刷新したりして、単価アップや新しい販売チャネル(ギフト・EC通販など)を狙うとき
▶ 省力化補助金向き:今は人手で行っている包装・ラベル貼り・箱詰め・目視検査を、一気に省人化したいとき(例:5人→2人)
⑥ 出荷・物流・倉庫工程
【典型の設備投資】 自動倉庫、移動ラック、パレタイザー、「無人で走る運搬ロボット(AGV)」、仕分けシステムなど
▶ ものづくり補助金向き:新たに消費者向けビジネス(BtoC)や小口出荷を始めるなど、物流のしくみそのものを変えたいとき(DXの要素も含めて)
▶ 省力化補助金向き:今ある出荷作業・パレット積み・庫内の搬送で、人手不足を解消したいとき
⑦ 情報・記録・管理(横断工程)
【典型の設備投資】 生産管理や在庫管理のシステム、HACCPの記録システム、「原料の流通履歴を追跡するしくみ(トレーサビリティ)」、原価管理システムなど
▶ ものづくり補助金向き:DXを新商品・新販路(EC通販・輸出)とセットで進め、ビジネスモデル自体を変えたいとき
▶ 省力化補助金向き:今ある紙の記録や転記作業をやめて、記録業務にかかる手間を減らしたいとき(検温記録や日報など)
「うちのケースは両方に当てはまりそう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そんなときの考え方を整理しておきます。
「新商品ラインだけれど、省力化の効果も大きい」というような投資は、両方の補助金で説明のロジックが立てられる場合があります。そんなときは、次のように切り分けるのが目安です。
✓ 新しさや付加価値を前面に出せるなら → ものづくり補助金
✓ 省人化のインパクトが大きく、カタログにある機器が中心なら → 省力化補助金
いま検討中の設備投資が、より具体的にどちらに向いているか、ご自身でチェックしてみましょう。
3. 自己診断チェックリスト
次の2つのリストで、当てはまるものがいくつあるか数えてみてください。
まずは、ものづくり補助金が向いているかどうかのチェックです。
A. ものづくり補助金向きのチェック項目
□ 新商品・新ブランド・新市場(EC通販・輸出・業務用の新ルートなど)を狙った投資である
□ 自社向けにカスタマイズしたライン設計や、自社専用のシステム開発が含まれる
□ 新商品の売上や粗利益を、今より大きく伸ばしたい(例:○○%増)
□ 競合他社と比べて「技術面でもビジネス面でも新しい」と説明できる
□ 「今ある商品の延長」というより、「これまでとは違う分野・市場に出る」という色合いが強い
続いて、省力化補助金が向いているかどうかのチェックです。
B. 省力化補助金向きのチェック項目
□ 主力ラインの人手不足がもう限界で、とにかく人数や残業を減らしたい
□ 導入したい設備は、カタログに載っている標準機(自動包装機・検査機・搬送機など)が中心
□ この投資で、ラインに必要な人数を○人減らせる見通しがある
□ 月の残業時間を、○○時間くらい減らせそうな見込みがある
□ 賃上げと人員シフト(定年延長・パート比率の見直しなど)もあわせて進めたい
チェックの結果から、向いている補助金の目安は次のように判定できます。
Aに3つ以上チェックがついた → ものづくり補助金(商品の付加価値を高める区分[高付加価値化枠]、海外展開向けの区分[グローバル枠])が向いています
Bに3つ以上チェックがついた → 省力化補助金(一般型)が向いています
A、Bともに3つ以上当てはまる → 「売上や付加価値の伸び」のストーリーを厚く書けるなら「ものづくり」、「人数や時間がどれだけ減るか」を数字で明確に示せるなら「省力化」との基準で判断するのがおすすめです
判定の軸が見えたところで、実際の事例を2件ご紹介します。同じ「食品メーカーの設備投資」でも、選んだ補助金が違います。
4. 採択事例:どちらで通ったか
1社は省力化補助金、もう1社はものづくり補助金で採択されました。それぞれのストーリーを見ていきましょう。
まず1社目は、包装ラインの人手不足を解消した冷凍惣菜メーカーの事例です。
【事例1】K社(冷凍惣菜) → 省力化補助金(一般型)で採択
【課題】包装ラインの人手不足が深刻でした。パート5人で回していたものの、誰か1人でも欠勤が出ると残業が常態化していたのです。
【投資内容】自動トレーシーラー、箱詰めロボット、X線検査機を導入(総額6,000万円)
【補助金】 省力化補助金(一般型)で採択。補助額2,500万円(補助率1/2〜2/3)
【成果】
- 包装ラインの人数:5人 → 2人(3人分の省人化に成功)
- 月の残業時間:120時間 → 40時間(67%削減)
- 余った人員を調理工程に配置転換し、あわせてパートの時給を30円アップ
もう1社は、生パンの主力会社が冷凍パン市場へ参入した事例です。
【事例2】L社(製パン) → ものづくり補助金(高付加価値化枠)で採択
【課題】店舗向けの生パンが主力でしたが、コンビニや量販店に納める冷凍パン市場へ参入したいと考えていました。
【投資内容】らせん状に流れる急速冷凍機(スパイラルフリーザー)、冷凍対応の成形機、冷凍専用の包装ラインを導入(総額8,000万円)
【補助金】 ものづくり補助金(高付加価値化枠)で採択。補助額2,500万円(補助率1/2)
【成果】
- 冷凍パンの新ブランドを立ち上げ、コンビニチェーン2社と新たに取引を開始
- 初年度の売上:1.2億円(新規事業として)
- 付加価値額:前年比+18%
成功事例を見て「うちでも申請できる気がしてきた」と感じた方も、ここで一度立ち止まってください。判断を一歩間違えると、せっかく申請をしても不採択になってしまうことがあります。
5. よくある失敗パターン
現場でよく見かける4つの失敗パターンをまとめました。
どれか1つでも当てはまるものがあれば、申請ストーリーを組み立て直したほうがよいサインかもしれません。
❌ こう考えると失敗しやすい
失敗パターン①:「新しい機械だから、ものづくり補助金でいけるだろう」
機械が新しいというだけでは、ここでいう「今までになかった新しさ(革新性)」にはなりません。審査員が見ているのは「事業として新しいかどうか」です。同じ製品を同じ市場に売っているのであれば、省力化補助金で出したほうが通りやすくなります。
失敗パターン②:「人が減るんだから、省力化補助金で通るだろう」
「なんとなく減りそう」では通用しません。「5人→2人」「月80時間削減」のように、具体的な数字(KPI)が必須です。Before/Afterの数字があいまいだと、不採択となる可能性が高いです。
失敗パターン③:「カタログ型のほうが簡単そうだから、それでいこう」
そもそもカタログにほしい機種が載っていないケースが多いです。「カタログにあるもので妥協」してしまうと、本当に必要な設備が入らず、投資の効果が半減してしまいます。
失敗パターン④:「両方の要素があるから、両方に申請すればどっちか通るだろう」
同じ設備投資の内容を、両方の補助金に重複して申請するのは原則NGです(重複受給の禁止)。どちらか一方に絞ったうえで、その補助金の審査基準に合わせてストーリーを組み立てるのが鉄則です。
逆に、採択されている方は何を意識しているのでしょうか。共通するシンプルなコツがあります。
まずは「この投資でいちばんアピールできる成果は何か?」を、自分自身に問いかけてみてください。
✓ 「新しい市場・新しい商品・新しい販売先」が明確 → ものづくり補助金
✓ 「○人削減・○時間削減」が数字で明確 → 省力化補助金
2つの補助金の使い分けについて、ここまでの内容を簡潔にまとめました。
まとめ
ものづくり補助金:工程そのものを「新しい商売の柱(新ビジネス)」に変えていくための投資
省力化補助金:今ある工程の人数・時間・残業を、目に見える形でぐっと減らすための投資
工程ごとに「何をしたいのか」をはっきりさせれば、どちらの補助金を使うべきか、自然と見えてくるはずです。
2つの補助金のうち、より適したものを選ぶためのサポートを希望される方は、ぜひお気軽に、記事の最後にご案内している「無料診断」をお試しください。
このシリーズは全5回構成です。第1回と第2回の記事でも、食品工場で活用できる補助金の基本について解説していますので、ぜひあわせて読んでみてください。
▶ 第1回:【どっちを使う?】食品工場の設備投資、ものづくり補助金vs省力化補助金|工程別・投資額別の選び方 ◀今ここ
▶ 第2回:【採択率を上げる】食品製造業のものづくり補助金 申請書の書き方|審査員に刺さる5つのポイント
▶ 第3回:【社内を動かす】補助金プロジェクトを成功させる社内体制の作り方|経営・開発・工場の三位一体術








