営農型太陽光(ソーラーシェアリング)補助金講座【第1回】営農型太陽光発電とは?費用・補助金・始め方【2026】ソーラーシェアリングの仕組み・費用・一時転用許可・補助金までを一気に見渡す


農業を続けながら発電もできるって本当? 農地に太陽光を載せていいの?



初期費用はいくらで、補助金は出るの? うちの畑でも始められる?
農家の方からも、産地と組んで加工品をつくる食品メーカーの方からも、こうした声をよくいただきます。
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、「農地を手放さずに、その上で電気も作る」仕組みです。田畑の上に支柱を立ててパネルを載せ、下では今までどおり作物を育てる——農業とエネルギーを一枚の土地で両立させる、いわば土地の”二毛作”です。売電収入や電気代の削減で経営を下支えできる一方、農地法のルールや初期投資という壁もあります。
この記事は、その全体像を一気に見渡す「地図」です。何が(仕組み)→ なぜ気になる(メリットと課題)→ いくら(費用)→ どう稼ぐ(FIT売電と自家消費)→ 何が要る(一時転用許可)→ いくら戻る(補助金の概観)→ どう始める(流れ)、の順で進みます。産地と組む食品メーカーの方にも、「取引先の農地でどんな絵が描けるか」が見えるはずです。補助金の細かい金額は第2回でじっくり扱うので、ここではまず地図を頭に入れてください。
- 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の仕組みと、ふつうの野立て太陽光との違い
- 費用の目安(kW単価・初期費用)と、FIT売電・自家消費のどちらで回すかの考え方
- 農地の一時転用許可の勘所(「下部農地の単収8割以上」ルールなど)
- 使える補助金の全体像と、始め方の流れ(詳しい補助金は第2回へ)
それでは、そもそもどういう仕組みなのか、というところから見ていきましょう。
1. 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは
1-1. 仕組み — 農地の”上”だけを借りて発電する
営農型太陽光発電(農地の上に支柱を立て、農業を続けながらその上で発電する仕組み)は、地面をコンクリートで固めてしまう「野立て太陽光」とは根本的に違います。あくまで農地は農地のまま。支柱の間隔を広くとり、パネルを高い位置に細く並べて、作物に必要な日光を下へ通します。だからトラクターや農機も入れますし、作物も育てられます。
ポイントは、「農地の一部を一時的に別の使い方にする」という整理で成り立っていることです。ここで登場するのが一時転用許可(農地を一時的に別用途に使う許可)です(詳しくは第4章)。
野立て太陽光は「農地をやめて発電所にする」、営農型は「農業を続けたまま上空を借りて発電する」。両者はまったく別物で、必要な許可も収益の考え方も異なります。
1-2. メリットと課題 — いいことばかりではない
魅力は、「同じ土地から二つの収入」が生まれること。作物の売上に加えて、売電収入や電気代削減が乗ります。とはいえ、初期投資や許可、営農を続ける義務など、押さえるべき課題もあります。まずは表で整理しましょう。
| メリット | 課題・注意点 |
|---|---|
| 農業収入に加えて売電・電気代削減の収入が乗る | 数百万〜数千万円規模の初期投資が必要 |
| 農地を農地のまま活かせる(転用で手放さない) | 農業を続けることが許可の絶対条件(後述の8割ルール) |
| 夏の高温や乾燥から作物・土壌を守る遮光効果も期待 | パネル下で育てやすい作物・育ちにくい作物がある |
| 災害時の非常用電源として地域の安心に | 支柱・高所設置ぶん、野立てよりkW単価が上がりやすい |
※メリットの出方も課題の重さも、作物・地域・電気の使い方で変わります。自分の圃場に当てはめて、どちらが大きいかを最初に見積もっておくことをおすすめします。
「二つの収入」は魅力ですが、営農をおろそかにすると許可が取り消される——ここが最大の勘所です。では、そもそもいくらかかるのか。次で費用を見ます。
2. 費用の目安 — 「kWいくら」で考える
野立てより単価が上がりやすい理由
費用は「1kW(キロワット)あたりいくら」で考えると見通しが立ちます。ソーラーシェアリングは、支柱を高く・広く組むぶん、地面に直接置く野立てより単価が上がりやすいのが一般的です。解説メディアでは1kWあたり20万円前後を目安に、たとえば1,500㎡の農地に50kWを載せると総額1,000万円ほど、といった試算が示されています。
ただし、これはあくまで目安です。パネルの価格や工事費、土地条件、パワコン(発電した直流を家庭・系統で使える交流に変える装置)や連系工事の有無で大きく振れます。実額は必ず複数社の見積りで確認してください。
| 規模の例 | 費用の目安(あくまで概算・要確認) |
|---|---|
| 1kWあたり | 約20万円前後(設置条件で変動) |
| 50kW(1,500㎡想定) | 総額1,000万円前後 |
| 主な内訳 | パネル・架台・支柱/パワコン/工事費/系統連系費 ほか |
※解説メディア等で示されている一般的な目安であり、実際の金額を保証するものではありません。パネル単価・工事費・系統連系費は年や地域で動くため、必ず複数社の見積りでご確認ください。
費用は年・メーカー・土地条件で動きます。ここに挙げた数字は”桁感”をつかむための目安。正式な事業計画は、必ず最新の見積りと後述の補助金を織り込んで立ててください。
「1,000万円」と聞くと身構えますが、収益の入り口は二通りあります。次で「売って稼ぐ」か「使って減らす」かを整理します。
3. FIT売電と自家消費の違い — どちらで回すか
電気を「売る」か「使って減らす」か
発電した電気の使い道は大きく二つ。系統に売る「FIT売電」と、自分の農場・工場で使う「自家消費」です。近年は買取価格の低下もあり、”売る”より”使って電気代を減らす”設計が増えていました。そして2026年度は、この二択の前提そのものが変わる年になります。地上設置の事業用太陽光は、2027年度以降はFIT・FIPの新規認定の対象から外れることが決まったためです。営農型(ソーラーシェアリング)も、この「地上設置」に含まれます。
- FIT・FIP(再生可能エネルギーを国のルールで買い取る制度。FITは固定価格、FIPは市場に連動した価格で買い取る仕組み)を使えば、発電した電気を決まった条件で売れます。ただし買取価格は年々見直され、2026年度の事業用(10kW以上50kW未満・地上設置)の買取価格は9.9円/kWh・調達期間20年と公表されています(屋根設置は別価格。区分や年度で変わるため、最新の価格表で要確認)。
- 自家消費は、売電せず自分で使うことで電気代そのものを圧縮する考え方。燃料・電気代が高いハウスや加工場を持つ産地・食品メーカーと相性が良い設計です。
| 比較項目 | FIT売電 | 自家消費 |
|---|---|---|
| 稼ぎ方 | 決まった価格で系統に売る | 電気代の削減として回収 |
| 価格の目安 | 2026年度は9.9円/kWh・調達期間20年(10kW以上50kW未満・地上設置)。2027年度以降は新規認定の対象外 | 買う電気を減らすほど得(電気単価しだい) |
| 向いている人 | 売電中心で回したい農地。ただし2026年度中に事業計画認定まで進められる案件に限られる | ハウス・加工場など電気を多く使う事業者 |
| 補助金との関係 | 後述の環境省の主力補助はFIT/FIP非利用が条件 | 自家消費型は補助金と組み合わせやすい |
| 地域活用要件 | 自家消費率30%以上または災害時活用が必要(10kW以上50kW未満) | 営農型は10年以内の一時転用許可があれば自家消費率要件が免除 |
※買取価格は区分・年度で改定されます。2026年度の事業用(10kW以上50kW未満・地上設置)は9.9円/kWh・調達期間20年と公表されていますが、申請前に必ず最新の価格表でご確認ください。
資源エネルギー庁の価格表では、事業用太陽光の地上設置区分について、2027年度以降はFIT・FIP制度の新規認定の対象としないことが明記されています。営農型も地上設置に含まれるため、売電で回す設計にするなら、2026年度中に事業計画認定まで到達させる必要があります。すでに認定を受けた案件のFIPへの移行は引き続き認められますが、これから始める案件の現実的な選択肢は「自家消費+補助金」に寄っていきます。地域共生型への支援の在り方は今後の審議会で検討される予定のため、最新情報は必ず一次情報でご確認ください。
ここが大事な分岐点です。後で触れる環境省の主力補助は「FIT/FIPの認定を取得しないこと」が前提なので、「売電で回すか」「補助金+自家消費で回すか」は、事業計画の入口で決めておく必要があります。
4. 農地の一時転用許可 — ソーラーシェアリング最大の関門
「営農を続けること」が許可の大前提
ソーラーシェアリングは、農地に設備を建てる以上、農地法にもとづく一時転用許可が必要です。ここが野立て太陽光と決定的に違うところ。しかも許可は「営農を続けること」が大前提で、続かなければ許可の意味がありません。
農林水産省のガイドラインでは、主に次の表の要件が定められています(数値は必ず最新の要綱・ガイドラインで確認してください)。
| 一時転用の主な要件 | 内容(要確認:最新ガイドライン) |
|---|---|
| 許可期間 | 原則3年以内/①担い手が下部農地で営農・②遊休農地の活用・③第2種または第3種農地 のいずれかなら10年以内(期間満了後は、それまでの営農状況をふまえて再許可が可能) |
| 下部農地の収量 | 地域平均の単収と比べ、おおむね8割以上を維持(2割以上の減少は不可) |
| 作物の品質 | 著しい劣化が生じないこと |
| 毎年の義務 | 栽培実績書・収支報告書の提出 |
※要件・許可期間は農林水産省のガイドライン改正で変わります。申請前に必ず最新の要綱と、地元の農業委員会の運用をあわせてご確認ください。
10年の許可が見込めるかどうかは、金融機関が返済期間をどう設計するかに直結します。加えて環境省の営農地事業では「農地転用で10年の許可が見込める提案か(認定農業者、遊休農地の活用、第2種・第3種農地での実施)」が加点項目とされ、農地の一時転用許可を取得済みの事業は優先採択の対象です。許可の設計は、資金調達と採択の両方に効いてきます。
「発電のために農業がおろそかになる」状態は許可されません。8割ルールと毎年の報告が営農型の背骨。作りやすい作物選び・遮光率の設計・営農体制まで含めて、最初の計画づくりが成否を分けます。
なお、3年を超える許可(10年以内)が認められた営農型では、自家消費がなくても災害時に活用できればFITの対象になり得る、といった扱いもあります。この辺りは制度が細かく、年度で更新されるため、必ず一次情報で確認してください。では、こうした要件をクリアする資金面で頼りになる補助金は? 次で概観します。
5. 補助金の概観 — 主力は環境省、詳細は第2回へ
本命は「地域共生型(営農地・水面等)」
初期投資の壁を下げてくれるのが補助金です。営農型で本命とされるのが、環境省の「地域共生型の太陽光発電設備の導入促進事業(営農地・水面等)」。営農地や水面などの新しい設置場所に太陽光を広げる狙いの事業です。
公表されている条件の要点は次のとおりです(年度・公募回で変わるため、最新の公募要領で要確認)。
| 環境省の主力補助(営農地事業) | 内容(要確認:最新公募要領) |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象経費の2分の1 |
| 上限額 | 1事業者あたり最大1億5,000万円(現行公募は単年度事業) |
| 主な条件 | FIT/FIPの認定を取得しないこと。供給先は①同一敷地内または自営線でつなぐ施設、②農業者等が所有・管理する農林漁業関連施設、③自治体の施設、④避難施設 のいずれか(②〜④は同一都道府県内) |
| 規模の目安 | パワコン合計10kW以上・積載率1.0以上 など |
| 対象者の例 | 民間企業、農業法人、農業を営む個人事業主(営農地事業の場合) ほか |
| その他の主な要件 | 停電時に電力を供給できるシステム構成/環境価値は需要家に帰属/自己託送は不可/交付決定前の発注・契約は不可 |
※令和8年度は一次公募(4月24日〜5月18日正午)・二次公募(6月22日〜7月17日正午)ともに受付を終了しています(2026年7月末時点)。次の機会は補正予算または令和9年度の公募になる見込みで、時期は予算の成立次第です。補助率・上限額・要件は年度および公募回によって変わり、公募期間も1か月前後と短いため、申請前に必ず最新の公募要領でご確認ください。
補助率2分の1・上限1億5,000万円は大きな後押しですが、「FIT/FIPの認定を取得しないこと」が前提である点は要注意。ただし「自家消費だけ」という意味ではありません。同じ敷地内や自営線でつないだ施設のほか、農業者等が所有・管理する農林漁業関連施設、自治体の施設、避難施設への供給も認められています(いずれも同一都道府県内で、余った電力をそれ以外へ売ることはできません)。産地と組む食品メーカーの場合、自社工場は「農林漁業関連施設」には当たらないため、同一敷地内または自営線でつなぐ設計が基本になります。3章で触れた「売電か自家消費か」の分岐と、この補助金は密接につながっています。このほか農林水産省の関連支援や自治体の上乗せ補助もあり、どれをどう組み合わせるかが採択と資金繰りの分かれ目になります。
補助金は「補助率・上限・条件」の三点セットで見ます。金額の大きさだけでなく、FIT非利用などの条件が自分の事業計画と噛み合うかを必ず確認しましょう。具体的な要件・スケジュール・組み合わせ方は第2回で徹底解説します。
制度とお金の見取り図がそろいました。最後に、始め方を確認しましょう。
6. 始め方の流れ — 相談から発電開始まで
最後に、実際の進め方をざっくり。細部は案件で変わりますが、大枠は次の順です。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. 構想・相談 | 作物・規模・売電/自家消費の方針を決め、施工会社や専門家に相談 |
| 2. 資金・補助金設計 | 見積り取得、補助金の対象・条件を確認して事業計画づくり |
| 3. 一時転用許可の申請 | 営農計画・収量見込みを整え、農業委員会等へ申請 |
| 4. 設計・施工・系統連系 | 支柱・パネル設置、パワコン・連系工事 |
| 5. 営農開始・毎年の報告 | 発電と営農を両立、栽培実績書・収支報告書を毎年提出 |
※一時転用許可には、営農計画づくりから許可まで数か月かかるのが一般的です。補助金の公募時期から逆算して、ステップ1・2を早めに動かしておくと無理がありません。
「作物を決める→お金の絵を描く→許可を取る→建てる→続けて報告する」。この一本道を、補助金を織り込みながら設計できると、無理のない営農型太陽光になります。
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※上部で発電し、下部で営農を続けるのが営農型太陽光の基本形です。
まとめ
営農型太陽光は、「農地を守りながら、もう一本の収入をつくる」選択肢です。最後に、この記事の要点を4つに絞って振り返ります。
- 営農型太陽光(ソーラーシェアリング)は、農地を手放さず「農業+発電」を両立する仕組み。野立て太陽光とは別物。
- 費用は1kWあたり20万円前後・50kWで1,000万円前後が目安(条件で変動、要確認)。稼ぎ方は「FIT売電」か「自家消費」。
- 一時転用許可では、下部農地の単収を地域平均の8割以上に保つこと・毎年の報告が要。営農が続くことが絶対条件。
- 主力補助は環境省の営農地・水面等事業(補助率1/2・上限1.5億円・FIT非利用が前提)。詳細は第2回で。
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第2回は「補助金を実際に取りにいく」回です。本命の環境省・地域共生型(営農地事業)の対象経費・上限・スケジュールを要綱ベースで読み解き、農水省の関連支援や自治体補助との組み合わせ方、採択されやすい事業計画のポイント、そして食品メーカーが産地と組んで申請する場合の勘所まで、実務目線で解説します。
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