【補助金リスク管理 第3回 】農水省と経産省の補助金はどちらが長続きするか|120年の歴史から読む補助金の寿命と先読み戦略

農水省と経産省の補助金はどちらが長続きするかのアイキャッチ

農水省と経産省、両方の補助金を使ってきたけど、結局どっちを軸に考えればいいんだろう?

経産省の補助金、ここ数年で急に増えたよね。これってずっと続くのかな?

食品メーカーが使える補助金は、ほとんどが農林水産省と経済産業省、この2つの省から出ています。どちらにも魅力的な制度がたくさんあります。 

ただ、ここで一度立ち止まって、考えてみてほしい問いがあります。 

「この補助金、来年も再来年も、ちゃんと続いてくれるんだろうか?」 

この問いに答えるためには、それぞれの補助金が「いつから・どんなふうに」続いてきたのかという歴史を見るのがいちばんの近道です。歴史をたどると、これからも長く続きそうな補助金なのか、それとも今だけの応急処置のような補助金なのか、はっきりと見えてくるからです。 

それでは、この記事で見ていく流れを、最初にざっと整理しておきましょう。 

📋 この記事でわかること 
  • 農水省が「補助金DNA」を120年間も持ち続けてきたワケ 
  • 経産省の補助金は、まだ10年の「実験中」 
  • 結局どっちが長く続くのか、横並びで見比べてみる 
  • 「続く補助金」を軸にして、投資の計画を立てよう 

まずは、120年という長い補助金の歴史を持つ農水省から見ていきましょう。 

目次

1. 農水省が「補助金DNA」を120年間も持ち続けてきたワケ 

日本の農業補助金の歴史を、ずーっとさかのぼってみると、1900年(明治33年)の「農会補助金」というものに行き着きます。今から120年以上も前のお話です。 

そこから今日まで、農水省は補助金を出すしくみが体にしみついている(補助金DNA)省であり続けてきました。最初は、農家さんに新しい農業のやり方を教えたり、新しい技術を広めたりするために国がお金を出す、というところからのスタートでした。 

農水省の補助金が、これまでどんなふうに姿を変えてきたのか。時代ごとの主な動きを、以下の表にまとめました。 

■ 農水省・補助金の歴史 

時代 この時期に起きたこと 
1900年 「農会補助金」がスタート。農業のやり方を教えたり、新しい技術を広めるために、国がお金を出すしくみが始まる 
1920〜30年代 農家さんが不景気で苦しんだ時期。新しく畑を開く支援(開墾助成)、田んぼの水路をなおす工事(用排水改良)、農家を助ける土木工事(救農土木)など、補助金がぐっと広がる 
1950〜60年代 戦争のあとの復興期。食べものをたくさん作るために、田畑をよくする工事への補助金がどんどん増える 
1970年代〜 お米を作る量を減らすしくみ(減反政策)が始まる。お米から別の作物に切り替える農家さんへ、ものすごい金額の補助金(転作補助金)が流れる 
2000年前後 「食料・農業・農村基本法」ができたころ。お米などの値段を国が支える方式(価格支持)から、農家さんに直接お金を渡す方式へと切り替わる 
2010年代〜 補助金の対象が、農家だけでなく食品メーカーや流通まで広がる。農家さんが加工や販売まで手がけること(六次産業化)や、海外への輸出を後押しする補助金も登場 
2020年代 食べものを安定して国内で確保すること(食料安全保障)が大きなテーマに。国産の原料を使ったり、人手を機械でカバーする取り組みなど、食品メーカー向けの補助金が一気に増える 

ここで一つ、注目してほしいポイントがあります。時代によってテーマや中身はずいぶん変わっていますが、「補助金という手段は、ずっと使われ続けている」という点です。 

では、農水省はなぜこんなにも長い間、補助金を出し続けてこられたのでしょうか。そこには、しっかりとした理由があります。 

なぜ農水省は、こんなに長く補助金を出し続けてこられたのか 

その背景にある理由を、4つに整理してみました。 

理由 中身 
① 食料安全保障は、国の最優先テーマ 国内で自分たちの食べものをどれくらいまかなえているか(食料自給率)を保ち、上げていくことは、国の安全保障そのものの一部です。だから、政権が変わっても優先度が下がりにくいのです。 
② 農業は、1社だけでは投資しきれない 産地で共同使用する施設や、運ぶしくみなど、民間の会社だけではなかなか投資が進まない分野が多いのが農業の特徴です。 
③ 地方の経済と、しっかり結びついている 農業や食品産業は、地方の雇用を支える大事な産業です。そのため、補助金をやめてしまうという判断は、政治的にもとても難しいのです。 
④ 食品産業は、国にとって戦略的に大事 輸入だけに頼ることのリスクが、ここ数年であらためてはっきりしました。国産の原料を使うことや、国内で作ることが、いまや大きな政策テーマになっています。 

農水省は、補助金を出すしくみが体にしみついている「補助金DNA」を持った省。 

テーマや中身は変わっても、補助金という手段そのものがなくなってしまう可能性は、とても低いです。 

ここまでで、農水省の「補助金DNA」が見えてきました。では、もう一方の経産省はどうでしょうか。 

2. 経産省の補助金は、まだ10年の「実験中」 

農水省と違って、経産省の中小企業向けの補助金には、まだそれほど長い歴史はありません。私たちがよく耳にする補助金の多くは、実は2012年度補正予算(平成24年度補正)以降に作られたものなんです。 

経産省の補助金がどんなふうに広がってきたのか、こちらも時代ごとに整理してみました。 

■ 経産省・中小向け補助金の歴史 

時代 この時期に起きたこと 
〜2012年 中小企業向けの補助金はあったけれど、規模はまだ小さかった時期。お金を貸すしくみ(融資)や保証が中心だった 
2012〜13年 「ものづくり補助金」と「小規模事業者持続化補助金」がスタート。ここから、中小企業向けの補助金政策が本格的に動き出す 
2016〜17年 「IT導入補助金」が試しに始まる。中小企業のデジタル化を後押しする時代へ 
2018〜19年 「生産性革命推進事業」として、大きなパッケージにまとまる。予算が一気にふくらみ、累計7,600億円規模に 
2020〜21年 コロナ対策として「事業再構築補助金」(最大1億円)など、これまでにないほど大きな補助金が登場 
202325 「大規模成長投資補助金」(令和5年度補正・2024年公募開始)と「中小企業成長加速化補助金」(令和6年度補正・2025年公募開始)が続けてできる。従業員のお給料を上げる条件(賃上げ要件)が強化されていく 

わずか10年ほどで、補助金の規模が数百億円から数千億円へと、一気にふくらみました。 

これだけ急に大きくなったのはありがたい話なのですが、一方で不安な面もあります。 

では、なぜ経産省の補助金は「これから先どうなるか読みにくい」のでしょうか。心配なポイントは、大きく4つあります。 

なぜ経産省の補助金は、これから先が読みにくいのか 

心配な点を、4つに整理してみました。 

心配なところ中身 
① まだ歴史が浅い たった10年ほどの実績しかなく、政策の「根っこ」が浅いのです。政権が変わったり(政権交代)、国のお財布事情が悪くなったりすると、大きく変わる可能性があります。 
② 景気対策の色がとても濃い コロナ対策や物価高対策など、その時々の困りごとへの応急処置として作られた補助金が多いのです。困りごとが落ち着けば、規模が縮まる可能性が高いです。 
③ 対象が広すぎる 「中小企業全般」をまるごと対象にしているので、農水省のように特定の産業へガッチリ張り付いた約束にはなっていません。 
④ 年度の途中で追加される予算に頼っている 年度の最初に決まる予算(当初予算)ではなく、年度の途中で追加されるお金(補正予算)で組まれることが多いため、毎年同じように続くかどうかが不確実なのです。 

経産省の補助金は、まだ「実験」の段階。 

10年後も同じ規模で続いているかどうかは、正直、誰にもわかりません。 

ここまでで、両方の補助金の歴史がだいぶ見えてきましたね。それぞれの特徴は、別々に見ているよりも、横並びにしたほうがずっとわかりやすくなります。 

3. 結局どっちが長く続くのか、横並びで見比べてみる 

農水省と経産省の補助金を、「これから先も続きそうか?」という1つのものさしで、項目ごとに並べてみます。歴史の長さや予算のしくみなど、判断のポイントを整理しました。 

両者の違いがひと目でわかるよう、以下の比較表にまとめました。 

農林水産省 経済産業省 
【歴史】 
120年以上 
【歴史】 
まだ10年ほど 
【何のための補助金か】 
食料安全保障(食べものを国内で守る)が国の方針 
【何のための補助金か】 
生産性を上げること(景気対策の色が濃い) 
【対象になる産業】 
農業・食品(ほかでは代わりがきかない) 
【対象になる産業】 
中小企業全般(とにかく幅が広い) 
【予算のつき方】 
当初予算+補正予算 
【予算のつき方】 
補正予算が中心 
【政権が変わったとき】 
あまり影響を受けない 
【政権が変わったとき】 
大きく影響を受けやすい 
【テーマが続くかどうか】 
名前は変わっても、中身は続いていく 
【テーマが続くかどうか】 
政権の方針で大きく揺れる 
【これからの見通し】 
続く可能性が高い 
【これからの見通し】 
読みにくい 

比較してみると、両者の性格がはっきり違うことがわかります。片方だけを選ぶのではなく、それぞれの特徴を活かして使い分けるのが、賢いやり方です。 

4. 「続く補助金」を軸にして、投資の計画を立てよう 

ここからは、食品メーカーが実際にどんなスタンスで補助金と付き合っていけばよいのか、具体的にお話ししていきます。まずは押さえておきたい、2つの考え方からです。 

1つ目は、農水省系の補助金の使い方です。 

【農水省系の補助金】 

2〜3年以上の、中長期の投資計画にしっかり組み込めます。 

特に、食品の安全管理のしくみ(HACCP)や食料安全保障に関わる補助金は、これからも続いていく可能性がとても高いです。 

2つ目は、経産省系の補助金の付き合い方です。こちらは農水省系とは、まったくスタンスが変わります。 

【経産省系の補助金】 

「今あるうちに使う」のが鉄則です。 

「成長加速化補助金」や「大規模成長投資補助金」など、条件がいいうちに、早めに申請するのが正解です。 

どちらが「いい・悪い」という話ではありません。大切なのは、それぞれの特徴をしっかり理解したうえで、御社の投資計画に合わせて、上手に使い分けていくことです。 

とはいえ、「じゃあ、うちは具体的にどっちを選べばいいの?」と迷いますよね。投資の計画ごとに、おすすめの補助金を以下の表にまとめました。 

■ 投資の計画ごとに、おすすめの補助金 

投資の計画 おすすめの補助金 
今年度中にすぐ決めたい設備投資 経産省系(成長加速化補助金・省力化系)を優先。条件がいいうちに動くのが正解です 
23年かけてじっくり進める中期計画 農水省系(HACCP・食料システム関連)を軸に。続く可能性が高いので安心です 
工場新設など、大規模な投資 両方を組み合わせるのが◎。農水省系で土台を固め、経産省系で上乗せします 
毎年、継続的に申請していきたい 農水省系を主軸に。制度が連続して続きやすいからです 

歴史を見れば、これからの動きを読むヒントが見えてきます。 

「これからも続く補助金」をしっかり見極めて、計画的に活用していく。 

それが、補助金をいちばん上手に活かす経営の判断です。 

📚 補助金リスク管理シリーズ|3回の振り返り 

このシリーズでは、食品メーカーが補助金とうまく付き合うための「3つの視点」をお伝えしてきました。最後に、それぞれを振り返ってみましょう。 

■ 第1回:補助金の「終わり方」を知る 

補助金には終わりがあります。事業再構築補助金の縮小や、食品原材料調達リスク軽減対策事業の名称変更など、終了や再編は突然やってきます。まずは「補助金は永遠ではない」という前提を持つことが、リスク管理の出発点です。 

■ 第2回:個別の補助金の「賞味期限」を見立てる 

「緊急」「補正」と名のつく制度は、もともと変化が前提です。一覧表を使って、自社が狙うべき補助金がいつまで使えそうか、今動かないと間に合わない補助金はどれか、を見立てておきましょう。 

■ 第3回(本記事):省庁別の「補助金DNA」を見極める 

個別の制度だけでなく、省庁単位で見ると、これからも続く軸が見えてきます。120年の歴史を持つ農水省と、10年ほどの経産省。歴史を読めば、未来の動きが読めます。 

3つの視点を組み合わせると、補助金は「単発の資金調達」から「経営戦略の武器」に変わります。 

「いつ終わるか」「いつまで申請できるか」「どの省庁が続けてくれるか」——この3つの問いに自社なりの答えを持てたとき、補助金は本当に使える制度になります。このシリーズが、皆さんの補助金との向き合い方を整理する一助となれば幸いです。 

もし気になることや、自社のケースで具体的に相談したいことがあれば、こちらからお気軽にお問い合わせください。シリーズを読んでくださった皆さんの「実際にどう動けばいいか」を、一緒に整理させていただきます。 

「農水省と経産省、うちはどちらを狙うべきか?」 

投資計画に合わせた補助金戦略をご提案します 

アカネサスコーポレーションは、食品業界に特化した補助金コンサルティングで、HACCP関連補助金の市場シェア45%を占めています。 

農水省系を中心に、120年の歴史を持つ「続く補助金」の活用を得意としています。 

📚 補助金リスク管理シリーズ|記事一覧 

✍️ この記事を書いた人

北條 竜太郎(ほうじょう りゅうたろう)|株式会社アカネサス 代表取締役

老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、

食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。

補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。

【会社実績】

・支援プロジェクト総事業費:363億円

・補助金採択額:126.5億円

・北海道から沖縄まで全国対応

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