【食品工場 補助金の教科書(プロセス編)第2回】ものづくり補助金 申請書の書き方|審査員に刺さる5つのポイント


ものづくり補助金を活用している他社の話は時々聞くけれど、申請書はどう書けば採択されるんだろう?
――そんなご相談をされるお客様、実は多くいらっしゃいます。
結論からお伝えすると、食品メーカーで採択を勝ち取るカギは、「食品ならではの困りごと」を数字で示し、「設備でどう解決するか」を工程図でつなぐこと――この2つに尽きます。
- 食品メーカーがものづくり補助金に合格する(採択される)ための5つのポイント
- 審査する人(審査員)に響く「課題の書き方」と「数字の根拠」のつくり方
- 食品工場の「作業の流れ図(工程図)」を、事業計画書にどう落とし込むか
- 採択率を上げる「ボーナス点(加点項目)」の取り方
- 実際に採択された事業計画書のリアルな中身
(※ものづくり補助金:令和8年度より『新事業進出・ものづくり補助金』に統合予定)
このシリーズでは、食品工場で活用できる補助金の選び方、申請書の書き方、また補助金プロジェクトを成功させる社内体制のつくり方等、補助金事業を稼働させるためのプロセスについて全5回にわたって解説していきます。
第2回のこの記事では、食品製造業がものづくり補助金で採択されるための投資計画の書類(事業計画書)の書き方を、「採択率を上げる5つのポイント」に整理して、お伝えしていきます。
詳しい解説に進む前に、まずは要点となる以下の「公式」に目を通しておいてください。
食品ならではの困りごと(数字で見せる)
設備とデジタル化(DX)を使った解決策(工程図)
効率(生産性)向上・会社が生み出す価値(付加価値)の増加・給料アップ(賃上げ)
1. まず押さえる:申請枠と補助率・上限額
ものづくり補助金には、申請の種類(申請枠)がいくつか用意されています。食品メーカーで使いやすい2つの枠について、国が出してくれる割合(補助率)ともらえる最大金額(補助上限額)とあわせて見ていきましょう。
2つの申請枠の特徴を、以下に整理しました。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 | 食品メーカーでの活用例 |
|---|---|---|---|
| 製品・サービス 高付加価値化枠 (通常枠) | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 (賃上げ特例で2/3) | 5人以下:750万円 6〜20人:1,000万円 21〜50人:1,500万円 51人以上:2,500万円 | 新商品開発、高付加価値商品の製造ライン構築 |
| グローバル枠 (輸出・海外展開) | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 (賃上げ特例で2/3) | 3,000万円 (大幅な賃上げ特例で最大4,000万円) | 輸出向けHACCP対応、海外規格対応ライン整備 |
上記は目安です。補助率や上限額、申請枠の名前は募集タイミング(公募回)ごとに変わるため、最新は募集の説明書(公募要領)でご確認ください。もらえる最低金額(補助下限額)は100万円です。
なお、ものづくり補助金に以前あった「省力化(オーダーメイド)枠」は廃止されました。自動計量機やロボット導入など省人化を主目的とする設備投資には、別途「省力化補助金」が用意されています(詳しくはシリーズ第1回をご覧ください)。
ここからは、採択率を引き上げるための5つのポイントを順番にお伝えします。
2. ポイント① 「今の儲からない構造」を数字で見せる
1つ目のポイントは、自社の困りごとを「食品業界ならではの数字」で示すこと。審査項目の「ニーズ・市場性」「課題の明確さ」に直結する見せどころです。
食品製造業で使う「課題の数字」
食品メーカーがよく使う指標を整理しました。
| 指標 | 書き方の例 |
|---|---|
| 歩留まり | 使える原料の割合(歩留まり)が85%にとどまり、年間○○万円分のムダな廃棄が発生 |
| 不良率 | 失敗品の割合(不良率)が3%で、返品や廃棄のコストが年間○○万円 |
| 人時生産量 | 1人が1時間でつくる量(人時生産量)が○○パックで、業界平均の○○%にとどまる |
| 残業時間 | 忙しい時期は月平均○○時間の残業が発生し、人件費が売上の○○%を占めている |
| 営業利益率 | 不良やムダが多く、売上に対するもうけの割合(営業利益率)が3%にとどまる |
(例)冷凍惣菜ラインで人手の計量・充填が効率の足を引っ張る箇所(ボトルネック)。人時生産量120パック(業界平均180)、不良率2.8%で年間350万円のムダ廃棄、月25時間の残業も常態化——こうした書き方ができます。
困りごとを数字で示せたら、次は「どう解決するか」を書きます。
3. ポイント② 「どの工程がどう変わるか」を工程単位で書く
食品工場は作業手順(工程)がはっきりしているのが特徴。「どの工程に何を入れて、どう変わるか」を図とセットで示すと、審査員に伝わります。
工程別に「課題→解決策」を対応させる
工程ごとに、現状と設備導入後を並べて整理しました。
| 工程 | 現状の課題 | 解決策(設備導入後) |
|---|---|---|
| 計量 | 人手4名 1回分(バッチ)あたり15分 誤差±5% | 自動計量機導入→2名 8分/バッチ 誤差±1% |
| 充填 | 人手3名 歩留まり85% | 自動充填機導入→人手1名 歩留まり95% |
| 検査 | 目視検査 見逃し率1.5% | X線検査機導入→見逃し率0.1% |
| 記録 | 手書き 30分/日 転記ミスあり | インターネットにつないだ機械(IoT)による温度記録→自動化、食品安全管理のしくみ(HACCP)に対応 |
審査員は製造業全体を見ています。「食品だからこそこの設備が必要」だと、工程図と数字でしっかり示すことで訴求力をアップさせましょう。
工程改善が描けたら、続いてはその効果を「会社全体の数字」につなげます。
4. ポイント③ 「生産性・付加価値・賃上げ」の数値を一貫させる
ものづくり補助金では付加価値や賃上げなどの数値目標と、その根拠がチェックされます。「大きすぎる夢数字」は逆効果なので、業界平均や自社実績と照らして現実的なレンジに収めましょう。
数値目標の組み立て方
設備効果が賃上げ原資になるまでの流れを、4段階で示します。
① 設備導入効果:人時生産量30%増、不良率半減
↓
② 売上・利益への影響:生産能力増+ロス削減で売上○○万円増、もうけの割合(粗利率)が○%改善
↓
③ 付加価値額の増加:3〜5年で付加価値額○○万円増(年平均○%成長)
↓
④ 賃上げ原資の確保:増加分の○%を賃金原資に充当、3年で平均賃金○%アップ
賃上げ要件を満たす施策
賃上げ要件を満たす進め方を、以下に整理しました。
- 基本給アップ(ベースアップ):「地域別最低賃金+30円以上」など、公募要領の水準まで引き上げ
- 対象範囲:正社員に加え、パート・契約社員の時間給も含めると要件を満たしやすい
- 毎年の昇給ルール(定期昇給ルール):年1回の昇給基準を明文化し、賃上げ計画として提示
数字をつなげたら、最後に食品メーカーならではのアピールをプラスしましょう。
5. ポイント④ 「安全・品質・衛生」もセットでアピールする
食品メーカーは「生産性向上+品質・衛生・安全の改善」をセットで打ち出すと説得力アップ。「食品だからこそ必要な設備」と審査員に納得してもらえる構成にします。
品質・安全の観点からの書き方例
代表的な設備ごとの書き方例を、以下に整理しました。
| 設備 | 品質・安全の観点からの書き方 |
|---|---|
| 金属検出機 X線検査機 | お客様からの苦情を○件→○件に削減し、返品や廃棄のコスト削減、ブランドのイメージダウン防止につなげる |
| IoT温度記録 トレーサビリティ | HACCP対応や輸出基準対応を実現し、新しい市場(輸出・中食大手)の開拓につなげる |
| 急速冷凍機 | 菌が増えにくい温度管理を実現し、賞味期限の延長と食品ロス削減を同時にかなえる |
| 自動包装機 | 人手を介さない包装で異物が入り込むリスクを下げ、衛生管理レベルを引き上げる |
品質・安全のアピールができたら、前もって取れる加点項目もおさえましょう。
6. ポイント⑤ 加点項目を「事前に取りにいく」
採択率を引き上げるには、事業計画の中身に加えて加点項目をどれだけ集められるかがカギ。「加点ができればラッキー」ではなく、最初から「必ず取りにいく」つもりで動くのがコツです。
食品製造業で狙いやすい加点項目一覧
食品メーカーが狙いやすい加点項目は以下のとおりです。
| 加点項目 | 内容 | 食品メーカーの取り組み例 |
|---|---|---|
| 経営革新計画 (成長性加点) | 経営の新しい取り組みの計画(経営革新計画)の承認 | 冷凍惣菜の消費者直販ビジネス(D2C)や輸出ビジネスなどをテーマに申請 |
| 事業継続力強化計画 (災害等加点) | 災害時の事業継続計画(BCP)の認定取得 | 非常用発電機、冷凍設備のBCP、代わりの原料の確保などを計画書に記載 |
| 賃上げ加点 | 給与総額を年平均○%増、最低賃金+○円にすることを誓約 | 省力化で浮いた人件費をベースアップに充てる計画を明記 |
| 食料システム構築計画 | 食料システム法に基づく計画の認定(経営力向上計画のみなし認定) | 持続可能な原料調達、省エネのライン、食品ロス削減をセットで計画 |
| パートナーシップ構築宣言 | 取引先とともに成長していくことを約束する宣言を公表 | 原料の仕入先や、製造を委託している工場(OEM工場)との価格の上乗せルール、長期取引の方針を宣言 |
加点のポイントを以下にまとめました。
✓ 上にあげた5項目のうち2〜3項目が得られれば、採択率はグッと変わります
✓ 「別紙だけでなく本文にも書く」ことで、審査員に伝わるアピールに
✓ 経営革新計画・事業継続力強化計画は申請から認定まで1〜2ヶ月かかるため、早めに着手
7.【事例】冷凍惣菜工場の採択事業計画
採択された冷凍惣菜工場の事例を紹介します。具体的なケースを知っていただくことで、貴社ではどんな計画が立案できるかといったイメージを膨らませてみてください。
【申請枠】製品・サービス高付加価値化枠(※過去公募時点)
【補助金額】4,500万円(補助率1/2)
【導入設備】自動計量充填機、X線検査機、IoT温度記録システム、急速冷凍機
【事業計画のポイント】
- 課題を数字で:人時生産量120パック(業界平均180の67%)、不良率2.8%で年間350万円のムダ廃棄
- 工程別に改善を可視化:計量・充填・検査・記録の4工程をBefore/Afterで数値化
- 品質・安全を訴求:X線検査機でクレーム5件→1件に削減、IoT記録でHACCP対応を強化
- 加点項目:事業継続力強化計画(冷凍設備BCP)+賃上げ加点(最低賃金+50円)を取得
✓ 人時生産量:120→180パック/人時(1.5倍)
✓ 不良率:2.8%→0.8%(廃棄ロス年間250万円削減)
✓ 付加価値額:3年で15%増加
✓ 大手中食チェーンとの新規取引開始(HACCP対応が決め手)
ここまでの内容を以下にまとめました。採択につなげるための重要なポイントですので、再確認として、ご覧ください。
まとめ
- 「今のままでは、なぜ儲からないのか」を数字で見せる(歩留まり・不良率・人時生産量)
- 「どの工程が、設備でどう変わるか」を工程ごとに書く(図+Before/After)
- 「生産性・付加価値・賃上げ」の数値の筋道を通す(逆算してムリのない数字に)
- 「安全・品質・衛生」をプラスの評価ポイントとして乗せる(食品メーカーならではのアピール)
- 加点項目を「前もって取りにいく」(2〜3項目は確実に加点をねらい、早めに動き出す)
「ものづくり」に限らず、さまざまある補助金に関するご相談を承っております。ご希望の方は記事の最後に無料診断のご案内をご用意していますので、お気軽にご活用ください。
このシリーズは全5回構成です。第1回、第3~5回の記事でも、食品工場で活用できる補助金の基本について解説していますので、ぜひあわせて読んでみてください。
▶ 第1回:【どっちを使う?】食品工場の設備投資、ものづくり補助金vs省力化補助金|工程別・投資額別の選び方
▶ 第2回:【採択率を上げる】食品製造業のものづくり補助金 申請書の書き方|審査員に刺さる5つのポイント ◀今ここ
▶ 第3回:【社内を動かす】補助金プロジェクトを成功させる社内体制の作り方|経営・開発・工場の三位一体術
「うちの設備投資は補助金の対象になる?」「事業計画の書き方を見てほしい」
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