【水産・漁業の設備投資 補助金講座 第3回】漁船の補助金とリース|中古・新造を導入する「競争力強化漁船導入事業」を解説


漁船を新しくしたいけど、1隻で数千万〜億単位。補助金なんて本当にあるの?



“漁船リース”ってよく聞くけど、結局だれが得する仕組み?
漁船は、漁業の設備投資のなかで最も金額の大きい買い物です。だからこそ国は、「買う」のではなく「借りる(リース)」という形で初期負担を抑える仕組みを用意しています。それが、この記事の主役 水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業(通称「漁船リース事業」)です。
この記事では、①この事業は何なのか → ②誰が・どうやって借りるのか → ③いくら軽くなるのか → ④どこから申請するのか、の順で整理します。専門用語には説明を添えますので、あなた(漁業者・漁業法人、そして産地と組む食品メーカー)が「使えるか・どう組むか」を判断するところまで、この記事だけで進められます。
- 「漁船 補助金」の主役、水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業(漁船をリースで導入する国の事業)の全体像
- 誰が借りて、誰が漁船を持ち、どうリース料が軽くなるのか(登場人物とお金の流れ)
- 中古漁船・新造漁船のどちらが対象になるか、補助率・上限額のリアル
- 産地と組む食品メーカーが「浜のプラン」を通じて関われるポイント
それでは、「漁船を借りる」という仕組みの全体像から見ていきましょう。
1. まず全体像|「漁船を借りる」とはどういうことか
買うのではなく、借りる
通常、漁船を新しくするなら造船所や中古船の持ち主から自分で買います。この事業では、その漁船を リース事業者(漁協・漁連などの漁業団体) がいったん取得(購入・所有)し、それをあなたにリース(貸し出し)します。購入代金を一括で用意する必要はなく、毎年のリース料を払っていく形です。
ポイントは、ここに国の補助が入ることです。国(正確には基金を預かる団体)が漁船の取得費の一部をリース事業者に助成するため、リース料の計算のもとになる金額が下がります。結果として、あなたが払うリース料が軽くなる――これがこの事業の最大の利点です。
登場人物を整理する
「誰が何をするのか」が分かると一気に見通しがよくなります。まずは登場人物を表で押さえましょう。
| 登場人物 | 役割 |
|---|---|
| 中核的漁業者(あなた) | 漁船を借りて操業する。この事業の主役 |
| リース事業者(漁協・漁連等の漁業団体) | 漁船を取得・所有し、中核的漁業者に貸す |
| 基金管理団体(特定非営利活動法人 水産業・漁村活性化推進機構) | 国の交付金を管理し、リース事業者へ助成する |
| 造船所・漁船メーカー・中古船所有者 | 漁船を供給する |
| 浜の広域プラン(浜の活力再生 or 漁船漁業構造改革) | 「誰を中核として支えるか」を定める土台の計画 |
| 取得価格等適正審査委員会 | 漁船の取得価格・改修内容が妥当かを審査する(基金管理団体が設置) |
💡 補助金はあなたの口座に直接振り込まれるわけではありません。国 → リース事業者(漁業団体)に助成が入り、それがリース料の軽減という形であなたに届きます。「借りる」からこそ成り立つ仕組みです。
では、あなたがその「中核的漁業者」になれるのか。次で見ていきます。
2. 誰が使える?|「中核的漁業者」と「浜の広域プラン」
対象は「中核的漁業者」
この事業は誰でも申し込めるわけではなく、地域の漁業を担う中核的漁業者(その浜のこれからを背負う担い手として位置づけられた漁業者・法人)が対象です。公表資料では、おおむね次のような目安が示されています。
| 区分 | 主な目安 |
|---|---|
| 個人経営 | 原則55才未満(ただし45才未満の後継者が確保されている場合はこの限りではない) |
| 法人経営 | 償却前利益(減価償却を差し引く前の利益)が確保されていること |
年齢や利益の要件は、若い担い手と、利益を出して次の漁船へつないでいける経営を後押しする趣旨です。細かな条件は年度・地域で変わり得るため、必ず最新の要綱でご確認ください。
入口は「浜の広域プラン」への位置づけ
もう一つの大事な条件が、地域の計画に位置づけられていることです。この事業は、次の2つのプランのどちらかに紐づいて動きます。
| 広域プラン | 対応する事業 |
|---|---|
| 浜の活力再生広域プラン | 浜の担い手漁船リース緊急事業 |
| 漁船漁業構造改革広域プラン | 漁船漁業構造改革緊急事業 |
浜の活力再生広域プラン(複数の浜が広域で連携して所得向上を目指す計画。第4回で扱う「浜プラン」の広域版)などに、あなたが中核的漁業者として盛り込まれていることが出発点です。いきなり漁船の話から入るのではなく、「この浜を、誰を軸にどう強くするか」という計画づくりが先にある、という順序になります。
💡 産地と組む食品メーカーの関わりどころはここです。安定調達したい魚種の産地で、広域プランづくりや担い手支援に一緒に入ることで、「中核的漁業者の漁船更新」という産地の足腰強化を後押しできます。
使える人の条件がつかめたところで、次はいちばん気になるお金の話に進みましょう。
3. いくら軽くなる?|補助率・上限とリース料の考え方
中古が原則。ただし事業によって新造の扱いが違う
リースで導入する漁船は、浜の担い手漁船リース緊急事業では原則として中古漁船です。ただし、十分に探しても必要な規模・仕様の中古船が調達できない場合や、中古船の取得・改修費が新船の建造費を上回ってしまう場合には、新造漁船も対象にできます。「まず中古で探し、どうしても難しければ新造」という優先順位です。一方、漁船漁業構造改革緊急事業では、新造・中古のどちらも対象になります(「もうかる漁業(漁業構造改革総合対策事業)」等で得られた成果を反映した漁船であることが条件です)。
補助率と上限額
いちばん気になるお金の話です。公表資料で確認できる数値は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 漁船の取得費・改修費の助成 | 1/2以内 |
| 1件あたりの助成上限 | 4億円 |
| マッチング経費(適船を探す人件費・旅費等) | 定額助成 |
※漁船漁業構造改革緊急事業で、漁獲対象魚種・漁法の複数化に取り組む場合に限り、上限は5億円になります。
漁船の取得費・改修費の 2分の1以内(1件あたり4億円が上限)が助成されます。加えて、あなたに合う漁船を探し仲介する「マッチング経費」も定額で助成されます。
ただし、金額は言い値で通るわけではありません。リース対象の漁船は、基金管理団体が設置する取得価格等適正審査委員会(取得価格や改修費が妥当かをチェックする委員会)の審査を受ける必要があります。見積りの根拠を早い段階でそろえておくことが、手続きをスムーズに進める近道です。
リース料はどう決まる?
では、あなたが実際に払うリース料はどう計算されるのか。基本の考え方はシンプルで、「漁船の取得価額から助成額を差し引いた額」を貸付期間で割った額が土台になります(これに事務手数料などの附加分と消費税が加わります)。助成でもとの金額が減るぶん、リース料が軽くなるという理屈です。
決まり方のポイントを、以下の表で整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リース料の基本 | (取得価額 − 助成額)÷ 貸付期間 |
| リース期間 | 漁船の法定耐用年数以上 (融資の償還期間を参考に協議して決定) |
| 途中解約 | 原則としてリース期間中の解約は不可 |
リース期間は漁船の法定耐用年数(税務上、使用できるとされる年数。たとえば20トン未満のFRP漁船なら5年)以上で、原則として途中解約はできません。長く乗り続ける前提の契約である点は押さえておきましょう。金額の実額は船種・年度で変わるため、最新の要綱で要確認です。
金額の目安が見えたら、残るは「どこから動くか」です。最後に、申請の入口とめざすゴールを確認しましょう。
4. どこから申請する?|入口と、めざすゴール
申請の入口
手続きの入口は「自分で役所に直行」ではありません。まず地域の広域委員会(広域プランをつくる地域の協議の場)などであなたが中核的漁業者として認定されることが前提になり、そのうえで基本は都道府県を経由して申請します(漁船漁業構造改革広域プランに基づく大臣管理漁業は、基金管理団体へ直接申請できます)。窓口や様式は年度で変わるため、まずは所属漁協や都道府県の水産担当に相談するのが確実です。
めざすゴール(成果目標)
補助金には「達成してほしい目標」がセットになっています。この事業では、次のような成果目標が掲げられています。
| 成果目標 | 内容 |
|---|---|
| 所得・利益の向上 | 5年以内に漁業所得または償却前利益を10%以上向上 |
| 次の代船へ | 自力で次の漁船を取得できるだけの利益を留保できる状態へ |
※新規就業者の場合は、原則としてその地域の平均漁業所得から10%以上の向上が目安になります。
単に新しい船に乗り換えて終わりではなく、「稼げる経営になり、次の漁船は自分の力で買える」ところまで見据えた設計です。だからこそ入口で経営の見通し(利益が出る操業計画)が問われます。さらに、リース契約の翌年以降は毎年の漁業所得・償却前利益の状況を報告する義務があり、目標が未達なら改善計画の作成を求められます。借りて終わりではなく、5年間の伴走が前提の制度だと考えてください。
💡 漁船は1件が大型の投資です。補助率・上限だけでなく、「5年で所得10%以上」という出口の宿題まで含めて無理のない計画を組むことが、採択と経営の両面で効きます。
最後に、ここまでの登場人物とお金の流れを、1枚の図で振り返っておきましょう。
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まとめ
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業は、漁協・漁連等が漁船を取得して中核的漁業者に貸す「リース型」の漁船補助金。国の助成でリース料が軽くなる
- 対象は中核的漁業者。浜の活力再生広域プラン等に位置づけられていることが入口。個人は原則55才未満などの目安あり
- 漁船は浜の担い手事業なら原則中古(条件つきで新造も可)、構造改革事業なら新造・中古いずれも可。助成は取得費・改修費の1/2以内・1件4億円上限(構造改革事業で魚種・漁法の複数化に取り組む場合は5億円)、マッチング経費は定額助成
- 申請は広域委員会での認定を経て基本は都道府県経由。成果目標は「5年以内に所得または償却前利益10%以上向上」で、達成状況は毎年報告。実額・要件は最新の要綱で要確認
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次回・第4回(最終回)は、ここまで見てきた設備投資の補助金を「どう組み合わせ、どう申請計画に落とすか」を総まとめします。加工・冷凍冷蔵などの陸上設備と漁船、産地と食品メーカーの投資をどう並べると相性がよいのか。産地と組んで一枚の絵を描くための実務の勘どころをお届けします。
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