【農山漁村振興交付金 第3回】農山漁村振興交付金 申請書の書き方|採択される記載例


『地域貢献ストーリー』が大事と聞くけど、何を書けばいいのか手が止まる……



数字の根拠を聞かれても自信を持って答えられない……
農山漁村振興交付金で採択される確率を上げるには、審査員の視点を理解することが欠かせません。この補助金は「地域活性化」を目的とした制度なので、単なる設備投資計画では採択されないんです。この記事では、審査員が重視するポイントと、選ばれる(採択される)計画書の書き方を、具体的に解説していきます。
- 審査員が見ている3つのポイント
- 「地域貢献ストーリー」はこう作る
- KPI(数値目標)の設定例
- 計画書はどう構成して書く?
- 落ちる計画書にありがちな共通点
- まとめ:採択される計画書の3つの鉄則
1. 審査員が見ている3つのポイント
農山漁村振興交付金の審査では、「良い設備投資かどうか」よりも「地域にとって価値があるか」が問われます。まずは、審査員が頭に置いている3つの問いを押さえておきましょう。


| 審査員の問い | 具体的にチェックされること |
|---|---|
| ① 地域は良くなる? | 農家の所得向上、雇用の創出、観光客の増加、地域ブランドの向上 |
| ② 実現できる? | 事業の主体(中心となる企業)の実績、資金計画、連携体制、自治体との調整状況 |
| ③ 成果は測れる? | 数値目標(KPI)の具体性、目標値の根拠、進捗を管理する体制 |
問い①:この事業で地域は良くなる?【最重要】
ここが一番重要な審査ポイントです。農山漁村振興交付金は「地域活性化」のための制度であり、食品メーカーの設備投資を支援するための制度ではありません。
審査員が見ているのは、「この工場ができることで、地域の農業者・住民・経済にどんなプラスがあるか」という点です。
審査員は、たとえば次のような点を確認しています。
- 地元の農業者の所得は上がるか?
- 地域に新しい雇用は生まれるか?
- 観光客や、地域に関わる人(関係人口)の増加につながるか?
- 地域ブランドの向上にもつながるか?
「自社の利益」ではなく「地域の利益」を前面に出すのがコツです。
問い②:その計画は本当に実現できる?
どんなに素晴らしいビジョンでも、実現できる見込みが低ければ採択されません。審査員は次のようなポイントを確認します。
具体的なチェックポイントは、次のとおりです。
- 事業主体(食品メーカー)に、それを実行できる実績や能力があるか?
- 資金計画は妥当か?自己負担する分のお金は確保できているか?
- 提携する農家(連携農業者)との関係は、すでに構築できているか?
- 自治体(都道府県や市町村)との調整は進んでいるか?
問い③:その成果は数字で測れる?
補助金である以上、成果を数値で示す必要があります。「なんとなく良くなる」という説明では通りません。
確認されるのは、たとえば次のような点です。
- 数値目標(KPI=成果を測る指標)が、具体的な数値で設定されているか?
- その目標数値の根拠は明確になっているか?
- 進捗の管理や報告の体制は整っているか?
KPIが曖昧だと、「本当にやる気があるのか」と疑われてしまいます。
2. 「地域貢献ストーリー」はこう作る
採択される計画書には、必ず説得力のある「地域貢献ストーリー」があります。これは単なる作文ではなく、事業そのものの設計図と言ってもいいほど大切な部分です。
地域貢献ストーリーは、次の4ステップで組み立てます。


| STEP | 内容 | 記載のポイント |
|---|---|---|
| ① | 地域の課題 | データで裏付ける(廃棄量、価格、人口の推移など) |
| ② | 解決策 | 「○○を作る」ではなく「○○で課題を解決する」と書く |
| ③ | 地域への効果 | 数値で示す(○万円増、○人を雇用、○トン削減 など) |
| ④ | 持続性 | 収支計画・販路・人材・連携を続けていく見通し |
ステップ①:地域の課題をはっきりさせる
まずは、工場や直売所をつくる予定の場所の「地域課題」を整理しましょう。農山漁村が抱えがちな典型的な課題と、自社の事業で解決できる課題を結びつけていくのがポイントです。
| 地域の課題(例) | 食品メーカーができること |
|---|---|
| 農産物の販路がない・販売価格が安い | 加工品にして付加価値を高める、安定的な買取 |
| 規格外品が廃棄されてしまっている | 規格外品を加工原料として買い取り、活用する |
| 若者の地域外流出・雇用機会の不足 | 地元での雇用を創出する(正社員・パート) |
| 観光資源はあるが、滞在時間が短い | 直売所や工場見学で、観光客の消費額を増やす |
| 地域の知名度がまだ低い | 地域ブランド商品の開発と発信 |
○○町では、特産品のブルーベリーが年間50トン生産されていますが、その約30%(15トン)が規格外品として廃棄されています。また、JAへの出荷価格は1kgあたり800円と低迷しており、生産農家の高齢化や後継者不足も深刻化しています。
ステップ②:解決策(=事業内容)を設計する
地域の課題に対して、自社の設備投資がどう解決策になるのかを設計していきます。「工場を作りたい」ではなく「工場を作ることで○○を解決する」という構造で書くことが重要です。
当社は○○町にブルーベリー加工施設を新設し、地元農家から規格外品を含むブルーベリーを1kgあたり1,000円で買い取ります。冷凍加工やジャム加工によって通年での出荷を可能にし、地元農家の所得向上と廃棄ロスの削減を実現します。併設する直売所では加工品の販売と観光PRを行い、地域への来訪者の増加も図ります。
ステップ③:地域への効果を「数字」で示す
地域への効果は、できるだけ数値で示しましょう。「農家の所得が上がる」ではなく「○○万円上がる」と書くことで、説得力がぐっと増します。
【農家所得】連携農家5戸の販売額が年間計500万円増加(1戸あたり100万円増)
【雇用創出】地元から正社員3名、パート7名を新規雇用
【観光消費】直売所への来訪者年間2万人、売上3,000万円を見込む
【廃棄削減】規格外品15トンの廃棄をゼロに
ステップ④:事業がきちんと続く見通しを説明する
補助金で施設を整備した後、事業が継続できる見通しを示す必要があります。「補助金が終わったら続かない」と思われたら、採択されません。
持続性の説明では、次の4つの観点を押さえておきましょう。
- 収支計画:売上とコストの見通し、黒字化する時期
- 販路:どこに、どう売るか(既存取引先の拡大、新規開拓の見込み)
- 人材:事業を続けるための人員体制
- 連携:農業者や自治体との関係を継続的に築く見通し
「補助金をもらって終わり」ではなく、「補助金を起点に地域と一緒に成長する」という姿勢を示しましょう。
次は、地域貢献ストーリーを支える「KPI」をどう設定するかを、具体例で見ていきましょう。
3. KPI(数値目標)の設定例
農山漁村振興交付金では、事業の成果を測る「KPI(重要業績評価指標)」を設定することが必須です。審査員はKPIの「具体性」と「妥当性」をしっかり見ています。




よく使われるKPIにはこんなものがある
代表的なKPIの設定例を、以下の表にまとめました。
| 効果の種類 | KPIの例 | 目標数値の例 |
|---|---|---|
| 農家の所得向上 | 連携農家の農産物販売額が増えること | 年間+500万円 |
| 雇用の創出 | 地元からの新規雇用者の人数 | 10名 |
| 売上の増加 | 新しく設けた施設での売上高 | 年間1億円 |
| 観光・交流の拡大 | 直売所や工場見学の来訪者数 | 年間2万人 |
| 廃棄ロスの削減 | 規格外品を活用した量 | 年間15トン |
目標数値の「根拠」を示す
目標数値は「こうなったらいいな」という願望ではなく、「根拠のある見通し」である必要があります。審査員に「この数字なら達成できそうだ」と納得してもらえる材料を用意しましょう。
【連携農家の販売額+500万円の根拠】
- 連携農家5戸から、年間30トンを買い取る予定(1戸あたり6トン)
- 買取価格:1kgあたり1,000円(現行のJA出荷価格800円の125%)
- 30トン × 1,000円/kg = 3,000万円
- 現行販売額2,500万円との差額 = 500万円増
根拠なく高い目標を掲げてしまうと、「計画が甘い」と評価されてしまいます。達成できる見込みのある数字を、根拠とセットで示しましょう。
KPIをいつ達成するかも明確にする
KPIは「事業完了時」「事業完了後○年」など、いつ達成するかの時期を明確にしておきます。一般的には、事業が完了してから3〜5年後の目標を設定することが多いです。
ここからは、計画書全体をどんな構成で組み立てるか、各セクションの書き方を整理していきます。
4. 計画書はどう構成して書く?
中小企業向けハード整備メニュー(産業支援型)の提案書には、募集の細かいルール(公募要領)で指定された様式があります。ここでは、各項目で何を書けばよいのか、ポイントを整理していきます。


計画書の各セクションの記載内容と重要度を、以下の表にまとめました。
| セクション | 記載内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| ①背景・目的 | 地域の課題、解決策、期待される効果 | ★★★ 最重要 |
| ②事業内容 | 施設の規模、設備の仕様、配置図 | ★★ |
| ③実施体制 | 事業主体、連携農家、自治体それぞれの役割 | ★★★ 最重要 |
| ④資金計画 | 総事業費、補助額、自己負担分の調達 | ★★ |
| ⑤KPI | 成果指標、目標値、根拠、達成時期 | ★★★ 最重要 |
| ⑥スケジュール | 年度ごとの工程、マイルストーン | ★ |
①背景・目的・③実施体制・⑤KPIの3つが、採否を分ける最重要セクションです。
①事業の背景・目的
ここが「地域貢献ストーリー」の核心部分になります。「地域の課題→解決策→効果」という流れを簡潔に記載しましょう。
ここに含めたい要素は、次の3つです。
- 地域の現状と課題(データを添えて示す)
- なぜこの事業が必要なのか
- 事業によって、どんな効果が生まれるのか
②事業内容
整備する施設や設備の具体的な内容を記載していきます。
記載すべき項目は、次のとおりです。
- 施設の種類と規模(建築面積、延床面積など)
- 主要な設備の内容(加工ライン、冷凍設備など)
- 施設の配置と動線(図面を添付する)
③実施体制
事業を実施する体制を明確にします。食品メーカー単独ではなく、地域との連携体制があることを示すのが重要です。
明示しておきたいのは、次の4つです。
- 事業主体(自社)の概要と実績
- 連携する農業者の一覧と、それぞれの役割
- 自治体の関わり方(計画への位置付け、支援内容)
- その他の連携先(観光協会、商工会など)


④資金計画
総事業費、補助金額、自己負担額を明示します。自己負担する分のお金をどう調達するか(自己資金・借入など)も書いておきましょう。
総事業費:2億円
補助金額:1億円(補助率1/2)
自己負担:1億円(自己資金5,000万円、金融機関借入5,000万円)
⑤成果目標(KPI)
先ほど整理したKPIを、一覧表にまとめます。指標ごとに「現状値→目標値→達成時期」を明記しましょう。
⑥事業スケジュール
事業の実施スケジュールを、ガントチャート(横棒の工程表)形式で示します。複数年にわたる事業の場合は、年度ごとの工程を明確にしておきましょう。
ここまでは「採択される書き方」を見てきましたが、逆に「採択されない書き方」のパターンも知っておきましょう。
5. 落ちる計画書にありがちな共通点
採択されない計画書には、いくつか共通点があります。自社の計画書をチェックするときの参考にしてください。


NGな書き方とOKな書き方を、具体例で比較してみましょう。
| ❌ NGな書き方 | ✅ OKな書き方 |
|---|---|
| 売上3億円を目指す | 地元農家の所得を、年間500万円向上させる |
| 連携農家2戸と契約予定 | 連携農家5戸と契約締結済み(契約書を別添) |
| 雇用を増やす | 地元から正社員3名・パート7名を新規雇用する |
| 順調に推移する見込み | 3年目に単年度で黒字化する(収支計画書を別添) |
NG①:自社の利益ばかり強調してしまう
「売上○億円を目指す」「生産性を○%向上」など、自社の利益ばかり書かれている計画書は落ちてしまいます。審査員は「それで、地域はどう良くなるの?」と思っているからです。
NG②:地域との連携が弱く見えてしまう
連携農業者が1〜2戸だけ、自治体との調整もこれから、というような計画は「本当に地域ぐるみの事業なのか」と疑われてしまいます。
具体的には、次の3つを押さえておきましょう。
- 連携農業者は最低でも3〜5戸以上が望ましい
- 自治体の「活性化計画」への位置付けは、申請前に完了させておく
- 地元の商工会や観光協会などとの連携も示せるとベター
NG③:KPIが曖昧、または根拠がない
「雇用を増やす」「売上を伸ばす」といった曖昧な表現や、根拠のない高すぎる目標はNGです。
改善のポイントは、次の2つです。
- 「雇用を増やす」→「地元から正社員3名、パート7名を新規雇用」と具体的に書く
- 目標数値には、必ず算出根拠を添える
NG④:収支計画が甘い
補助金で施設を作っても、その後の収支が赤字続きでは意味がありません。黒字化する見通しを示せない計画は、採択されません。
示しておきたい要素は、次の3つです。
- 売上見通しの根拠(販路、単価、数量)
- コスト見通し(人件費、原材料費、減価償却など)
- 黒字化の時期(通常は2〜3年目が目安)
NG⑤:申請書類が雑に見える
誤字脱字、数字の不整合、図面の不備など、書類の品質が低い計画書は「仕事も雑なのでは」と評価されてしまいます。
提出前に、次の3点を必ずチェックしましょう。
- 数字の整合性を必ずチェックする(本文と表、各所の金額など)
- 図面や写真は見やすく配置する
- 第三者に読んでもらい、分かりにくい箇所を修正する
それでは最後に、ここまでの内容をまとめておきます。
まとめ


提出前に、以下のチェックリストで自社の計画書を確認してみてください。
| ✓ | 採択される計画書のチェックリスト |
|---|---|
| □ | 「自社の利益」より「地域の利益」を前面に出しているか |
| □ | 「地域の課題→解決策→効果→持続性」の4ステップで構成されているか |
| □ | KPIは、具体的な数値と根拠がセットになっているか |
| □ | 連携農家3戸以上を確保し、自治体との調整も完了しているか |
| □ | 収支計画で、黒字化の見通しを示しているか |
改めて、この記事のポイントを整理します。
- 審査員は「地域が良くなるか」「実現できるか」「成果が測れるか」の3点を見ている
- 地域貢献ストーリーは「課題→解決策→効果→持続性」の4ステップで組み立てる
- KPIは、具体的な数値と根拠をセットで示す
- 自社の利益ばかり、連携が弱い、KPIが曖昧、こうした計画書は落ちる
第4回:申請手続きの実務 〜自治体・農政局との調整、提出書類、スケジュール管理〜
次回は「申請手続きの実務」を解説します。自治体・農政局との調整の進め方、提出書類の準備、スケジュール管理のポイントを整理します。提案書の中身が固まった後、実際に提出までこぎつけるための具体的な動き方を、時系列で押さえていただけます。
第1回:農山漁村振興交付金とは?食品メーカーが工場整備に使える理由
第2回:農山漁村振興交付金 上限2億円|工場・直売所の整備に使う方法
▶ 第3回:農山漁村振興交付金 申請書の書き方|採択される記載例 ◀今ここ
第4回:農山漁村振興交付金 申請の流れ|必要書類と逆算スケジュール








