設備別 補助金講座 第7回(最終回)キッチンカーの補助金【2026】「車両は対象外」を乗り越える3つのルート  

キッチンカーの補助金のアイキャッチ

キッチンカーで開業したいけど、車を買うお金に補助金って出るの?

農産物の直売や6次化にキッチンカーを使いたい。農業者でも使える制度はある?

キッチンカーは、固定店舗より初期費用を抑えて始められる開業スタイルとして人気です。ただ、補助金の世界には落とし穴があります。キッチンカーは会計上「車両運搬具(乗り物として扱われる資産の区分)」になりやすく、多くの補助金で車両の購入費そのものが対象外とされているのです。 

第1回から第6回までは、工場や産地に「据え置く設備」の話でした。最終回は、動く設備=車です。資産区分が「機械装置」でも「建物」でもなく「車両運搬具」に変わるだけで、これまでの回で当たり前に使えていた制度が、そろって入口で外れます。このシリーズで繰り返してきた「資産区分から入る」という考え方が、いちばん極端な形で効いてくるテーマです。 

「じゃあ補助金は諦めるしかない?」——いいえ、乗り越え方があります。この記事では、①車両本体と厨房設備・改造費を切り分ける、②車両が対象になり得る制度を選ぶ、③自治体独自のキッチンカー補助を使う、という3つのルートを、費用相場や営業許可の基礎知識とあわせて整理します。 

📋 この記事でわかること 
  • キッチンカー開業にかかる費用の相場と内訳 
  • 多くの補助金で「車両本体が対象外」になる理由 
  • 車両×でも使える3ルート(経費の切り分け・制度の選択・自治体独自補助) 
  • 補助金が使えないときの備え(日本政策金融公庫の創業融資)と営業許可の基本 

それでは、まず費用の全体像と「車両は対象外」問題から見ていきましょう。 

目次

💰 1. まず知る:費用相場と「車両は対象外」問題 

開業費用はいくらかかる? 

キッチンカーの開業費用は、車両の取得方法(新車製作・中古・リース)と装備で大きく変わりますが、車両と改造・設備を合わせておおむね250万〜400万円程度が目安とされています。 

費用項目 目安 
車両取得費 約250万〜350万円(中古なら50万〜100万円程度圧縮も) 
内装・厨房設備工事 約80万〜150万円 
営業許可申請 約1.6万〜2万円(自治体で異なる) 
保険・広告・運転資金など 数十万円規模を別途確保 

※金額は開業事例から見た一般的な目安です。車両のサイズ、架装の仕様、新車製作か中古かによって大きく振れます。計画づくりの段階で、架装業者から仕様別の見積を取って置き換えてください。 

開業資金の大半を占めるのは「車両+改造」。ここに補助金を効かせられるかが勝負になります。 

なぜ「車両は対象外」なのか 

理由はシンプルで、自動車は事業以外(私用)にも使えてしまい、転売もしやすいからです。会計上もキッチンカーは「車両運搬具」に区分されるのが一般的で、国の補助金の多くは公募要領で自動車等車両を対象外経費と明記しています。実際、小規模事業者持続化補助金の公募要領(第20回)では、対象外の車両の例として「キッチンカー」「キッチントレーラー」が名指しで挙げられています。 

💡 車両を先に契約してはいけません 

「キッチンカー=補助金で買える」と思い込んで車両を先に契約するのは危険です。多くの制度で車両本体は対象外。ただし、この後の3つのルートで初期費用をカバーできる余地があります。 

ここからが本題です。車両が対象外でも、初期費用を補助でカバーする道は3つあります。まずは経費の切り分けから。 

✂️ 2. ルート①:車両と「改造費」を切り分ける——持続化補助金 

制度の基本 

まずは持続化補助金の骨格を、同じ切り口で並べておきます。 

項目 内容(第20回公募要領で確認) 
補助上限 通常枠50万円 
補助率 2/3(賃金引上げ特例を使う赤字事業者は3/4) 
上乗せ特例 インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円(併用で最大+200万円=補助上限250万円) 
対象者 商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他・宿泊娯楽業は20人以下 等の小規模事業者 
創業直後の場合 通常枠とは別に「創業型」(上限200万円・補助率2/3)がある。要件は次項 

※補助上限・補助率・特例の内容と対象経費の範囲は、公募回ごとに見直されます。とくに第19回で、賃金引上げ特例の考え方と、広報費・ウェブサイト関連費の取扱いが変更されました。表は第20回公募要領時点の内容です。申請前に必ず最新回の公募要領でご確認ください。 

創業直後なら、通常枠より「創業型」 

見落としやすいのが、持続化補助金には一般型(通常枠)とは別に「創業型」があることです。補助上限は200万円、補助率2/3、インボイス特例で最大250万円。通常枠の50万円とは桁が違います。令和6年度補正予算からの制度再編で一般型から独立し、専用の公募要領・事務局が設けられました(一般型との重複申請はできません)。 

ただし要件が2つあります。①開業日から公募締切までがおおむね1年以内であること、②産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業」の支援を受け、証明書を取得していること。②は市区町村や認定支援機関が実施する創業支援(経営・財務・販路開拓・人材育成の4分野)で、受講が完了していないと申請そのものができません。準備に数週間〜数か月かかることもあるため、キッチンカーの見積を取り始めるのと同じタイミングで、市区町村の産業振興担当窓口に「特定創業支援等事業を受けたい」と相談してください。 

※なお一般型(通常枠)は「申請時点で開業し、事業者として稼働していること」が原則で、開業予定の段階では原則として対象になりません。開業のタイミングと公募の締切を、先に線表に落としておくのが安全です。 

飲食店が「新たに移動販売で販路を広げる」計画は、販路開拓の取り組みとして申請の土台に乗ります。問題は経費の中身です。 

車両本体は対象外、しかし「改造費」は対象になり得る 

公募要領・公式Q&Aでは車両の扱いが切り分けられています。キッチンカー(車両)そのものの購入費は対象外。一方で、公募要領の対象経費に「移動販売等を目的とした車の内装・改造工事」が挙げられており、Q&Aでも「既存自動車を改装する場合、その改装する部分のみは補助の対象」とされています(経費区分は委託・外注費)。 

つまり実務の型はこうです。車両(中古車や手持ちの軽トラック等)は自己資金や融資で取得し、シンク・給排水タンク・作業台・換気設備などの厨房架装(改造)部分を補助対象として切り分けて申請する。改造費は80万〜150万円規模になることが多いので、補助率2/3が効けば負担は大きく変わります。対象経費の線引きは公募回ごとに変わり得るため、申請前に最新回の公募要領と商工会・商工会議所で必ず確認してください。 

切り分けだけでは足りない、あるいは車両ごと支援してほしい——そんなときは、制度そのものを選び直します。 

🔍 3. ルート②:車両が対象になり得る制度を選ぶ 

農業者なら:農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策) 

直売や6次産業化でキッチンカーを使いたい農業者は、農山漁村振興交付金の整備事業が候補です。大阪府の案内では補助率3/10以内(条件により1/2以内)、限度額1億円(条件により2億円)と大型。ただし固定的な施設整備が中心で、移動販売車が対象になるかは公表資料上明確でないため、都道府県・地方農政局の窓口で個別に要確認です。 

※農山漁村振興交付金は、対策名・メニュー名が年度ごとに再編される交付金です。補助率・限度額も都道府県の運用で幅が出るため、記載は確認時点の一例としてお読みください。移動販売車の可否は、計画を固める前に窓口へご確認ください。 

その他の国の制度は「事業全体」で考える 

2026年度から、従来の「ものづくり補助金」は「新事業進出補助金」と統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました(第1回公募要領は2026年6月公開、補助上限7,000万円・賃上げ特例で9,000万円)。ここでも、公道を自走できる車両本体の購入費は公募要領の対象外経費として認められていません(キッチンカーの車両本体もここに含まれます)。狙えるとすれば改造・架装や搭載する設備の部分ですが、その線引きは公募回の要領・事務局判断によります。共通する考え方は、「車を買う」ではなく「新しい事業(販路・業態)をつくる投資」として計画を組み、車両本体と設備・改造を分けて整理すること。制度ごとの可否は最新の公募要領で要確認です。 

※ネット上には「新事業進出枠ならキッチンカー本体も補助対象」と書かれた解説も見られますが、統合前の新事業進出補助金の公募要領は「自動車等車両(税法上の車両及び運搬具に該当しないものを除く)…の購入費・修理費・車検費用・内装に係る費用」を対象外経費として明記していました。車両本体が対象になる前提で計画を組むのは危険です。必ず最新回の公募要領を確認し、判断に迷う経費は事務局へ照会してください。 

国の制度で車両本体まで届かないなら、視点を足元の自治体に移します。ここに、唯一の例外があります。 

🏛️ 4. ルート③:自治体独自のキッチンカー補助を探す 

車両購入費まで対象にする自治体がある 

国の制度と違い、自治体には車両そのものを見てくれる補助が実在します。代表的な2例を挙げます。 

自治体の例 内容(確認時点) 
北海道妹背牛町(起業支援事業) 新車キッチンカー:1/2・上限100万円/中古:1/2・75万円/リース:1/2・50万円(町内起業・5年以上営業・定住見込み等が要件) 
埼玉県小川町(キッチンカー導入支援補助金) 1/2・上限50万円。導入・改修等が対象(令和7年度分は公募終了・町公式ページも現在非公開=再募集の有無は町窓口への確認が必須) 

※表は確認時点の内容です。自治体補助は単年度予算が基本で、予算上限に達し次第終了、翌年度は募集なし、ということが普通に起こります。金額よりも先に「今年度の募集があるか」をご確認ください。 

にぎわい創出・買い物支援・移住起業を切り口にした自治体補助が全国に点在します。「開業予定地の市区町村名+キッチンカー+補助金」で検索し、必ず窓口で最新状況を確認してください。 

💡 金額より先に「条件」を見る 

自治体補助は「町内での営業継続」「定住」「地元イベント出店」などの条件が付くのが通例。金額だけでなく、自分の出店計画と条件が合うかを先に確認しましょう。 

補助金が使えないときの備え:公庫の創業融資 

補助金は原則後払いで、タイミングが合わないこともあります。併せて検討したいのが日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」(融資)。新規開業または開業後おおむね7年以内が対象で、融資限度額7,200万円、設備資金は返済20年以内。車両本体の取得費にも使える資金調達手段です。 

※融資限度額・返済期間は制度全体の枠であり、誰でも上限まで借りられるという意味ではありません。自己資金の割合や事業計画の内容で条件が変わるため、車両の契約前に公庫の窓口へご相談ください。 

資金の目処が立ったら、最後にもう一つ、車両の設計に先立って決めておくべきことがあります。 

🚿 5. 忘れずに:営業許可(保健所)とタンク容量でメニューが決まる 

タンク容量が、出せるメニューを決める 

キッチンカーの営業には出店地域を管轄する保健所の営業許可が必要です。2021年6月の食品衛生法改正で許可は「飲食店営業」に一本化され、基準も標準化されました。実務上重要なのが給水・排水タンクの容量で、目安として約40Lなら単一品目の簡易調理のみ、約80Lなら複数品目(使い捨て食器)、約200Lなら大量の水を使う調理や車内仕込みまで、という段階です。許可の有効範囲は都道府県等によって異なるため、複数エリアで出店するなら改造の設計前に出店予定地の保健所へ相談するのが鉄則です。 

※タンク容量の段階は標準化された基準に基づく目安で、細かな運用は自治体ごとに異なります。「あとから大きいタンクに替える」は架装のやり直しになりやすいため、メニュー構想 → 必要な水量 → タンク容量 → 車両サイズ、の順に決めるのが安全です。 

ここまでの3ルートを、最後に1枚の図で確認しておきます。 

🔄 図:キッチンカー補助金の3ルート(車両対象外の乗り越え方) 

キッチンカーの補助金|キッチンカー補助金の3ルート(図解) 

※出発点は「その支出が車両本体か、それ以外か」の一点です。ここを見積の段階で分けておけるかどうかで、使える制度の数が変わります。 

📝 まとめ 

キッチンカーは「車両運搬具」という資産区分ひとつで、使える制度がここまで絞られます。最後に、この記事の要点を4つに絞って振り返ります。 

🎯 【まとめ】この記事のポイント 
  • キッチンカー開業は車両+改造でおおむね250万〜400万円。多くの補助金で車両本体は対象外(持続化補助金は「キッチンカー」名指しで対象外明記) 
  • ルート①:持続化補助金。創業後1年以内なら「創業型」(上限200万円・特定創業支援等事業の受講が必須)、営業中なら一般型・通常枠(50万円・2/3)で「移動販売目的の内装・改造工事」を切り分けて申請 
  • ルート②:農業者は農山漁村振興交付金が候補(車両可否は窓口で要確認)。ルート③:妹背牛町(新車1/2・100万円)など自治体独自補助 
  • 補助金は後払い=公庫の創業融資(限度額7,200万円)と組み合わせ、保健所の営業許可(タンク容量)を先に設計する 

「うちの見積のうち、どこまでが補助対象になるのか切り分けてほしい」「開業予定地の自治体に使える補助があるか調べたい」という方は、下記の無料相談をご利用ください。 

🎯 無料相談のご案内 

「キッチンカーの見積を、車両本体と厨房架装に分けるところから相談したい」

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という方は、ぜひお気軽にご相談ください。 

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📖 シリーズ完結 

「設備別 補助金講座」は今回で最終回です。全7回を通じて、設備の種類ごとに「どの制度が使えるか・どこに落とし穴があるか」を見てきました。補助金は年度ごとに要件が変わります。実際の設備投資を検討する際は、最新の公募要領の確認とあわせて、計画づくりの段階からお気軽にご相談ください。 

✍️ この記事を書いた人

北條 竜太郎(ほうじょう りゅうたろう)|株式会社アカネサス 代表取締役

老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、

食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。

補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。

【会社実績】

・支援プロジェクト総事業費:363億円

・補助金採択額:126.5億円

・北海道から沖縄まで全国対応

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