HACCPハード事業申請解説【第1回】HACCPハード事業とは? 補助率1/2で輸出向け工場整備ができる補助金を解説


海外に自社製品を輸出したいが、工場の衛生管理体制が追いつかない



輸出先国が求めるHACCP認証を取りたいが、設備投資の費用が重い
——そんな悩みを抱える食品メーカーにとって、絶対に見逃せない補助金制度があります。
それが「HACCPハード事業」、正式名称で「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」です。
本記事では、HACCPハード事業の基礎知識から、対象になるかどうかの簡易チェックまで、申請を検討して頂く第一歩として必要な情報をまとめてみました!
- HACCPハード事業の目的と制度概要
- なぜ今がチャンスなのか——輸出5兆円目標との関係
- 補助率1/2の「大型設備補助」という位置づけ
- 国内向けHACCPとの違い
- 「うちは対象になるか?」簡易チェックリスト!
HACCPハード事業とは?どんな補助金なの?
正式名称と制度の目的
HACCPハード事業の正式名称は「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」です。農林水産省が実施する補助金制度で、日本の農林水産物・食品の輸出拡大を目的としています。
ん?HACCPって何と思われた方はいらっしゃいますでしょうか?スーパーでお菓子、加工食品などを買われたとき、パッケージの裏側を見たことはありますか?「HACCP認証取得」とか「HACCP対応施設で製造」といった表示を見かけたことがあるかもしれません。
HACCPというのは、簡単に言えば「食品の安全を守るための国際的な衛生管理の仕組み」のことです。原材料の受け入れから製造、出荷まで、すべての工程で危害要因(細菌や異物など)を管理し、安全な食品を作り出すための手法です。
そして、ここが重要なポイントなんですが、日本の食品を海外に輸出したいと思ったとき、多くの国ではこのHACCPに対応した施設で作られたものでないと認めてくれません。つまり、HACCP対応は「輸出するための必須条件」と言ってもいいでしょう。
なぜ今がチャンスなのか——輸出5兆円目標との関係
HACCPハード事業を理解するには、まず押さえておきたいことがあります。それが、政府が掲げる「農林水産物・食品の輸出額5兆円目標」です。実はこの目標、この事業と深い関わりがあるんですね。
政府は食料・農業・農村基本計画の中で、2025年に2兆円、2030年には5兆円という輸出目標を設定しています。2024年時点の輸出額は約1.5兆円で過去最高を更新しておりますが、目標達成にはまだまだ大幅な伸びが必要な状況なんです。


この5兆円目標を達成するには、実は大きな課題があります。それが、海外市場が求める衛生管理水準をクリアできる工場や施設が圧倒的に足りていない、という問題です。
HACCPハード事業は、まさにこうした「供給側のボトルネック」を解消するために設けられた補助金なのです。
- 5兆円目標 = 需要側の話(「これだけ輸出を増やそう」という目標)
- HACCPハード事業 = 供給側の話(「輸出できる工場を増やす」ための支援)
→ 国が本気で予算をつけて輸出体制を整えようとしている! ⇒ 今が申請のチャンス!!
つまり、HACCPハード事業は国策としての輸出拡大を支える「インフラ整備メニュー」の一つです。国が目標達成に向けて本気で予算を確保している今だからこそ、活用を検討すべきタイミングと言えるでしょう。
何が補助されるのか
補助の対象となるのは、輸出向けHACCP等の認証取得に必要な施設・設備の整備費用です。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 施設の新設・改修(床・壁・天井・排水溝等の衛生対応工事)
- 衛生管理設備の導入(エアシャワー、殺菌装置、手洗い設備等)
- 温度管理システム(冷蔵・冷凍設備、温度記録装置等)
- 検査・品質管理機器(金属探知機、異物検査装置等)
- 輸出向け包装ライン
また、施設・設備整備に付随して、HACCP認証取得のためのコンサルティング費用や人材育成費用も、一定の範囲内で対象となるケースもあります。
補助率1/2——「大型設備補助」としての位置づけ
HACCPハード事業の最大の特徴は、補助率が原則1/2(事業費の2分の1)という点です。
食品製造業向けの補助金にはいろいろな種類があるんですが、設備投資に対してここまでの補助率が適用される制度って、実はそう多くないんです。例えば、ものづくり補助金の補助率は通常1/2〜2/3なんですが、上限額は750万円〜1,250万円程度なんですね。一方で、HACCPハード事業は数千万円〜数億円規模のプロジェクトにも対応できる「大型設備補助」としての性格を持っています。
1億円の設備投資を行う場合、最大5,000万円の補助を受けられる可能性があります。輸出向け工場整備を検討しているなら、まず検討すべき制度の一つです。
ただし、補助金である以上、「使いたい設備を何でも買える」というわけではないんです。あくまで輸出向けHACCP等の認証取得に必要であることが前提になっていて、単なる老朽化による更新や省人化目的だけの設備は対象外になってしまいます。この点については、第2回で詳しく解説しますね。
国内向けHACCPとの違い——「国際認証レベル」が求められる
「うちはすでにHACCP対応しているから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、HACCPハード事業で求められるのは、国内の食品衛生法で義務化されたHACCPとは異なる水準です。
2021年6月から、日本国内ではすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。しかし、これは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」であり、国際的な第三者認証とは水準が異なります。
HACCPハード事業の対象となるのは、輸出先国が求めるHACCP認証や、それと同等以上の国際規格(ISO22000、FSSC22000、JFS-C、GFSI承認スキーム等)を取得可能なレベルまで施設・設備・管理体制を引き上げることです。
次の表でその違いを確認していきましょう!
【国内向けHACCPと輸出向けHACCPの違い】
| 比較項目 | 国内向けHACCP | 輸出向けHACCP(本事業対象) |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 食品衛生法 | 輸出先国の法令・規制 |
| 認証レベル | 義務化された基準 (業種別の手引書に準拠) | 国際認証レベル (HACCP認証、FSSC22000等) |
| 求められる水準 | 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でも可 | 第三者認証の取得が必要なケースが多い |
| 施設要件 | 既存施設の改善で対応可能なことが多い | 輸出先国の施設基準を満たす必要あり |
| 審査・監査 | 保健所による確認 | 認証機関による審査+輸出先国による査察も |
輸出先の国によって、求められる認証や基準は変わってくるんです。例えば、米国向けならFSMA(食品安全強化法)への対応が必要ですし、EU向けならEU規則への準拠、中東向けならハラール認証が必要になるケースもあります。「どの国に・どの製品を輸出するか」によって、目指すべき認証が変わってくる点は押さえておきましょう。
「うちは対象になるか?」簡易チェックリスト
HACCPハード事業の申請を検討する前に、まず自社が対象になりそうかどうか、以下のチェックリストで確認してみてください。


上記5項目のうち、4つ以上当てはまる場合は、HACCPハード事業の活用を具体的に検討する価値があります。
逆に、「国内販売のみで輸出予定がない」とか「設備投資ではなく人材育成だけ支援してほしい」といった場合は、残念ながら本事業の対象外になってしまいます。ただ、他の補助金制度が使える可能性はありますので、専門家に相談してみることをお勧めします。
まとめ——まずは「輸出×設備投資」の組み合わせを確認
HACCPハード事業は、食品の海外輸出を目指す事業者にとって、設備投資の負担を大きく軽減できる制度です。
- 補助率1/2の大型設備補助
- 輸出向けHACCP等の認証取得に必要な施設・設備が対象
- 国内HACCP義務化とは異なる「国際認証レベル」が求められる
- 申請には事前相談から計画策定まで相応の準備期間が必要
次回(第2回)では、「対象になる設備・工事と『掛かり増し経費』の考え方」について詳しく解説していきます。「何が補助されて、何が補助されないのか」を正しく理解することが、申請成功の第一歩になります!
✍️ この記事を書いた人
北條 竜太郎(ほうじょう りゅうたろう)|株式会社アカネサス 代表取締役
老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、
食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。
補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。
【会社実績】
・支援プロジェクト総事業費:363億円
・補助金採択額:126.5億円
・北海道から沖縄まで全国対応
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