農林水産系補助金講座【第4回】農水省補助金に「環境対応」が必須になった理由|みどり戦略を知らないと採択されない時代へ  

農林水産系補助金講座 【第4回】のアイキャッチ

うちは製造業だから、環境系の補助金は関係ないよね?

みどり戦略って、結局は農業の話でしょう?

第3回では、輸出支援が「展示会などの単発」から「プロジェクト型」へ変わったことを見てきました。今回のテーマは「環境対応」です。食品メーカーの方にとって、「環境対応」や「みどり戦略」という言葉は、どこか遠い話に聞こえるかもしれません。 

ですが、令和7年度補正の補助金の設計を見ると、この受け止め方は大きく見直す必要があります。環境対応は、もはや「別枠」ではありません。輸出・構造転換・物流といった、あらゆる補助金に共通してかかわる「必須レイヤー(欠かせない土台)」になりつつあるのです。この記事では、その中身をやさしく解きほぐしていきます。 

📋 この記事でわかること 
  • 「みどりの食料システム戦略」が、農業だけでなく加工・流通・食品産業も対象にしていること 
  • 令和7年度補正で「みどり」が、輸出促進や構造転換と「別々の箱」ではなく一体で位置づけられていること 
  • GHG(温室効果ガス)削減やCFP(カーボンフットプリント)算定が、補助金採択の「加点要素」になりつつあること 
  • 食品メーカーの対応ポイント(省エネ設備/CFP算定/環境配慮型原料) 
  • すべての補助金申請に「環境」の視点を一文加えることが、採択率を上げるコツになること 
目次

1 「環境系の補助金」という認識は、もう古い 

食品メーカーの方にとって、「環境対応」や「みどり戦略」という言葉は、どこか遠い話に聞こえるかもしれません。「うちは製造業だから、環境系の補助金は関係ない」「みどり戦略って農業の話でしょう?」――そう思っている方も多いのではないでしょうか。 

しかし、令和7年度補正の補助金の設計を見ると、この認識は大きく修正する必要があります。環境対応は「別枠」ではなく、輸出・構造転換・物流といったあらゆる補助金の「必須レイヤー」になりつつあります。 

では、そもそも「みどり戦略」とは何なのでしょうか。まずは全体像から押さえましょう。 

2 「みどりの食料システム戦略」とは何か 

「みどりの食料システム戦略」は、2021年に農林水産省が策定した中長期の戦略です。2050年までに農林水産業のCO2(二酸化炭素)排出をゼロにすること、化学農薬・化学肥料の使用量を減らすこと、有機農業を広げることなどを目指しています。(出典:農水省・みどりの食料システム戦略) 

一見すると農業生産者向けの話に見えます。ですが、戦略の概要資料を見ると、「加工・流通」「食品産業の競争力強化」「輸出拡大」「サプライチェーン(原料から販売までの流れ)全体の環境負荷を下げること」が柱として整理されています。つまり、食品メーカーもはっきりと対象に入っている、ということです。(参考:農水省・みどりの食料システム戦略概要資料) 

3 令和7年度補正で「みどり」はどう位置づけられているか 

令和7年度予算の資料を見ると、「みどりの食料システム戦略推進総合対策」として、当初予算6億円・補正予算38億円が計上されています。(出典:財務省・令和7年度農林水産関係予算について) 

注目したいのは、この「みどり関連予算」が、輸出促進や構造転換と「横並びの別物」ではなく、一体で位置づけられている点です。 

同じ財務省の資料のなかで、共同利用施設の整備(200億円)、構造転換支援、スマート農業、輸出促進と並んで、「環境と調和のとれた食料システムの確立」として、一体的に記載されています。 

つまり、第1回でお伝えした「農業構造転換集中対策期間」の4本柱(農地の大区画化・共同利用施設・スマート農業・輸出産地の育成)と、みどり戦略は、別々の箱ではありません。同じ「構造を変える5年」のなかで、一体で進められる設計になっているのです。 

この関係を、下の図にまとめました。 

農林水産系補助金講座|みどり戦略は「構造を変える5年」の器の中で、4本柱と一体で推進される(図解)

図のとおり、環境(みどり)の視点はどの柱にも絡みます。たとえば共同利用施設なら省エネ型の冷蔵・加工設備、スマート農業ならデータ活用による資源のムダ削減、輸出産地の育成なら環境負荷を抑えた生産・加工、といった形で、4本柱それぞれの投資に「環境」を重ねることが採択の後押しになります。 

4 輸出促進パッケージの中に「みどり」が組み込まれている 

令和7年度補正の輸出促進緊急対策事業を見ると、この「一体化」がよりはっきりします。 

全国菓子工業組合連合会の解説資料によれば、農林水産物・食品輸出促進緊急対策のなかに、GFP大規模輸出産地、生産流通基盤の強化、サプライチェーン連結強化と並んで、「環境・みどり戦略に対応した生産・加工」への支援がメニューに含まれています。(参考:全国菓子工業組合連合会・輸出促進緊急対策解説) 

専門家

輸出を伸ばしたいなら、環境対応もセットで考えてください

ということです。 

この方向性は、令和8年度当初予算にも引き継がれています。輸出関連予算の概算要求資料では、「みどりの食料システム戦略、産地における戦略的な人材育成といった重点政策の推進に必要な施設の整備等を支援します」と明記されており、GFP輸出産地支援、サプライチェーン強化と「みどり戦略対応」が、同じパッケージのなかに位置づけられています。(参考:農水省・令和8年度輸出促進関連予算概算要求) 

この流れは、予算の枠組みだけでなく、実際の採択の「ものさし」にも表れています。 

5 GHG削減・CFP算定が「加点要素」になっている 

具体的には、個別の補助事業の採択基準に、この傾向がはっきり出ています。 

たとえば、「みどりの食料システム戦略推進総合対策」の公募要領では、評価項目に「GHG削減などみどり戦略への貢献」が含まれています。令和7年度補正の各種公募要領を見ても、GHG(温室効果ガス)の排出削減への貢献、みどりの食料システム戦略への寄与が、評価項目や加点要素として設定されているケースが増えています。 

また、「CFP(カーボンフットプリント。製品ができるまでに出るCO2の量)の算定・見える化」に関する支援も進んでいます。農水省は「フードサプライチェーンにおける脱炭素化の『見える化』の推進」として、CFP算定・見える化の支援やモデル事業を整理しています。加工食品のCFP算定モデル事業では、算定・見える化に取り組む企業を選び、ロールモデル(お手本となる事例)として支援しています。(参考:農水省・フードサプライチェーン脱炭素「見える化」) 

自社製品のCO2排出量を算定して表示する取り組みは、補助金の世界でも「やっておいて当然」になりつつあります。 

6 食品メーカーにとっての「環境対応」とは 

では、食品メーカーにとって具体的に何をすればいいのか。主なポイントは3つです。下の表で整理しました。 

3つの対応 どういうこと? 
① 省エネ・GHG削減設備の導入 製造工程でのエネルギー消費を減らし、CO2排出を減らす設備投資は、環境関連の補助枠で支援の対象になります。ボイラーの更新、冷凍機の高効率化、太陽光発電の導入などがこれに当たります。 
② CFP算定・見える化 自社製品のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、表示する取り組みです。農水省の「脱炭素見える化」関連事業や、フードテック(食の技術革新)実証などの枠で支援を受けられる場合があります。輸出先の国(特に欧州)では、環境負荷の「見える化」が取引の条件になりつつあります。国内向けだけでなく、輸出を見据えた準備としても、CFP算定は重要です。 
③ 環境配慮型原料への切り替え 有機原料、国産原料、環境認証を取得した原料への切り替えも、みどり戦略の文脈で評価されます。みどり戦略のKPI(目標を測るものさし)では、有機農業の拡大や環境保全型農業の面積拡大がはっきり掲げられており、「環境配慮型原料のサプライチェーン構築」は戦略のど真ん中のテーマです。産地と連携してこうしたサプライチェーンをつくるプロジェクトは、構造転換や輸出促進の枠でも採択されやすくなります。 

7 「環境」は別枠ではなく、すべての補助金に染み込んでいる 

ここまで読んで、「結局、環境専用の補助金を取りに行けばいいのか」と思われたかもしれません。しかし、本当に大切なのは、逆の発想です。 

令和7年度補正以降、環境対応は「環境専用枠」だけの話ではなくなっています。輸出促進、構造転換、物流DX、HACCPハード――どの補助事業でも、「環境負荷の低減」「GHG削減」「みどり戦略への貢献」が、採択の加点要素や評価軸に組み込まれつつあります。 

申請書を書くときに、「この設備投資は環境負荷をどう下げるのか」「GHG削減にどう貢献するのか」という視点を、一文でも加えておく。それだけで、採択の可能性が変わってくる時代に入っています。 

8 食品メーカーが「みどり」の流れに乗るポイント 

最後に、食品メーカーが「みどり」の流れに乗るための準備を、3つのポイントに整理しました。 

3つのポイント どういうこと? 
① まずは自社のGHG排出量を 
把握する 
環境対応の第一歩は、現状を知ることです。自社工場のエネルギー消費量やCO2排出量を、概算でも把握しておくと、補助金を申請するときの説得力が増します。 
② 省エネ設備の更新と 
補助金を組み合わせる 
老朽化した設備を更新するタイミングで、省エネ・GHG削減の効果が高い設備を選ぶ。その際に環境関連の補助枠を活用する。このパターンは、比較的取り組みやすい進め方です。 
③ 輸出・構造転換の申請書に 
「環境」の視点を加える 
HACCPハードやサプライチェーン連結強化など、環境とは直接関係なさそうな補助事業でも、「この投資によるGHG削減効果」「みどり戦略への貢献」を一文加えておく。これが、採択率を上げるコツです。 

【まとめ】第4回:「環境」は、すべての補助金の必須レイヤーへ 

  1. 「みどりの食料システム戦略」は、農業だけでなく加工・流通・食品産業も対象にしています 
  2. 令和7年度補正では「みどり推進総合対策」に補正38億円を計上し、輸出・構造転換と「一体」で位置づけています 
  3. 輸出促進のパッケージのなかにも「みどり戦略対応」が組み込まれています 
  4. GHG削減・CFP算定は、補助金採択の「加点要素」になりつつあります 
  5. 食品メーカーの対応ポイントは「省エネ設備」「CFP算定」「環境配慮型原料」の3つです 
  6. すべての補助金申請で「環境」の視点を一文加えることが、採択率を上げるカギになります 
📖 次回(第5回)予告 

次回は、「物流2024年問題」の先にあるサプライチェーンDXの補助金を見ていきます。令和7年度補正では「食品等物流合理化緊急対策」が設けられ、物流対策は単年度の緊急対応ではなく、「標準化・DX・共同化」を前提とした継続的な投資領域へと変わっています。 

✍️ この記事を書いた人

北條 竜太郎(ほうじょう りゅうたろう)|株式会社アカネサス 代表取締役

老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、

食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。

補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。

【会社実績】

・支援プロジェクト総事業費:363億円

・補助金採択額:126.5億円

・北海道から沖縄まで全国対応

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