農林水産系補助金講座【第6回】食品メーカーが単独で使える農水省補助金2選|令和7年度補正のHACCPハード・産地連携支援を徹底解説

農林水産系補助金講座 【第6回】のアイキャッチ

これまでの補助金って、結局は産地と組まないと使えないんじゃないの?

うちみたいな食品メーカーが、単独で申請できる大型の補助金ってあるのかな……

第2回から第5回では、「産地との連携」や「サプライチェーン全体での構想」が求められる補助金を中心に紹介してきました。今回は視点を変えて、食品メーカーが主体(申請の中心)となって使える大型の枠を取り上げます。 

結論から言うと、令和7年度補正には、食品メーカーが単独で申請できる大型枠がしっかり用意されています。特に押さえておくべきは「HACCPハード」と「産地連携支援」の2つ。この記事では、この2つを軸に、食品メーカーが直接使える補助金をやさしく整理していきます。 

📋 この記事でわかること 
  • 食品メーカーが「主体で申請できる」大型枠が令和7年度補正に用意されていること 
  • 「HACCPハード」(上限6億円・補助率2分の1)の概要・対象経費・対象事業者 
  • 「産地連携支援」(予算枠49億円・補助率2分の1)の概要・対象・申請要件 
  • 2つの使い分けと、組み合わせて使う方法 
  • 物流合理化・ものづくり補助金・CFP算定支援など、中〜小規模の枠と補助金活用マップ 
目次

1 「産地主体」の補助金だけではない 

第2回〜第5回で紹介してきた補助金は、「産地との連携」や「サプライチェーン(原料から販売までの流れ)全体での構想」が求められるものが多くありました。 

「構造転換の枠は産地が主体」「輸出促進はプロジェクト型で複数事業者の連携が必要」「物流DXもサプライチェーン連携が前提」――そう聞くと、「結局、食品メーカーが単独で使える補助金はないのか?」と思われた方もいるかもしれません。 

ご安心ください。令和7年度補正には、食品メーカーが主体となって申請できる大型枠がしっかり用意されています。特に押さえておくべきは、「HACCPハード」と「産地連携支援」の2つです。 

2 食品メーカー向け補助金の全体像 

まず、食品メーカーが使いやすい補助金を規模別に整理しました。 

規模 補助金名 上限額 補助率 
大型 HACCPハード(輸出向けHACCP等対応施設整備) 6億円 2分の1以内 
大型 産地連携支援緊急対策事業 ―(1件上限は公募要領による) 2分の1以内 
中型 食品等物流合理化緊急対策 数千万円〜数億円 10分の4〜3分の1 
中型 食品関連産業の国際競争力強化 ― ― 
小型 省人化設備(ものづくり補助金など) 数百万円〜数千万円 2分の1〜3分の2 
小型 フードテック実証・CFP算定支援 数百万円〜2,000万円 ― 

※産地連携支援は、令和7年度補正の予算枠が49億円です。1件あたりの上限額は公募要領で確認が必要です。 

このなかで、食品メーカーが主体となって申請でき、かつ金額規模が大きいのが「HACCPハード」と「産地連携支援」です。次からひとつずつ詳しく見ていきます。 

3 HACCPハード(輸出向けHACCP等対応施設整備事業) 

概要 

食品メーカーにとって最も使いやすい大型補助金のひとつが、通称「HACCPハード」です。正式名称は「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」。輸出先の国の衛生規制やHACCP(食品の安全を守る国際的な衛生管理の指針)に対応した施設整備を支援する事業として、農林水産省が続けて実施しています。 

補助金額・補助率 

令和7年度補正では、1件あたりの上限額が、これまでの5億円から6億円へ引き上げられました。(出典:青森県・令和7年度補正HACCPハード事業概要) 

補助上限:6億円(下限250万円)/補助率:2分の1以内 

対象経費 

対象になる経費は、大きく「施設等整備事業」と「効果促進事業」に分かれます。下の表で整理しました。 

区分 対象になる経費 
施設等整備事業 加工食品などの輸出拡大に必要な、製造・加工・流通施設の新設・増築・改修 
輸出対応に必要な機器の整備 

冷蔵・冷凍設備の増強 

輸出向けの包装・表示に対応する設備 
効果促進事業 
(施設整備事業費の20%以内) 
HACCPの認定・認証を取るためのコンサルティング費用 

認証手数料 

人材育成費 

対象事業者 

食品製造事業者、食品流通事業者、中間加工事業者などが対象で、規模の要件(会社の大きさの条件)はありません。中小企業から大企業まで申請できます。 

こんな食品メーカーにおすすめ(HACCPハード) 
輸出を始めたい、または輸出を拡大したい 
製造施設のHACCP対応が必要 
輸出先の国の衛生規制に対応した設備投資をしたい 
冷蔵・冷凍設備を増強したい 

「輸出対応の入口」として、最も使いやすい枠です。 

4 産地連携支援緊急対策事業(持続的な食料システム確立緊急対策) 

概要 

もうひとつの大型枠が、「持続的な食料システム確立緊急対策事業」のなかの「産地連携支援緊急対策事業」です。 

この事業の特徴は、食品製造事業者が産地を支援する取組を補助の対象にしている点です。輸入原材料の価格の高止まりや調達リスクに対応し、国産原材料の安定調達と付加価値の向上を図ることが目的です。(出典:農水省・令和7年度補正予算PR資料) 

補助金額・補助率 

予算枠:49億円(令和7年度補正)/補助率:2分の1以内 

1件あたりの上限額は公募要領で確認が必要ですが、予算規模から見て、数千万円〜数億円クラスの案件が想定されています。 

対象となる取組・申請要件 

産地連携計画(産地と連携して取り組む計画)に基づく取組が対象です。対象となる取組と、計画に記載すべき申請要件を、下の表で整理しました。 

項目 内容 
対象となる取組 食品製造事業者から産地への農業機械・資材の貸与・提供 

国産原材料の取扱量の増加に伴う機械設備などの導入 

産地と連携した新商品の開発 
申請要件 
(産地連携計画に記載すること) 
国産原材料の利用拡大(10%以上の取扱量の増加) 

連携する生産者の拡大 

モデル事例として、産地連携フォーラムなどの活動への参画 

事務局・実施体制 

JMAC(日本能率協会コンサルティング)が事務局を務めており、毎年続けて実施されている事業です。「産地連携フォーラム」などを通じて、先行事例の共有やマッチング(引き合わせ)の支援も行われています。 

こんな食品メーカーにおすすめ(産地連携支援) 
輸入原料から国産原料への切り替えを検討している 
特定の産地との関係を深めたい 
原料調達の安定化を図りたい 
国産原料を使った新商品を開発したい 

「産地連携の入口」として、食品メーカーが主体で使える貴重な枠です。 

5 両者の使い分け・組み合わせ 

HACCPハードと産地連携支援は、目的が異なるため、使い分けが明確です。下の表で整理しました。 

目的 適した補助金 
輸出を始めたい・拡大したい → HACCPハード 
国産原料の調達を強化したい → 産地連携支援 
輸出向けに国産原料を使いたい → 両方を組み合わせ 

たとえば、「国産原料を使った高付加価値の商品を開発し、輸出する」というプロジェクトであれば、産地連携支援で国産原料の調達体制と新商品開発を整え、HACCPハードで輸出対応の製造ラインを整備する、という形で、両方の補助金を組み合わせることも可能です。 

6 その他、食品メーカーが使いやすい中〜小規模枠 

大型枠だけでなく、中〜小規模の補助金も押さえておきましょう。主な3つを、下の表に整理しました。 

補助金 金額・補助率と、食品メーカーにとっての使いどころ 
食品等物流合理化緊急対策事業 
(第5回で詳述) 
DX・情報連携系:数千万円〜4,000万円クラス/設備導入系:1億円前後。補助率は4/10または1/3以内。物流パートナーとの連携は必要ですが、食品メーカーも申請の主体になれます。 
省人化設備 
(ものづくり補助金など) 
数百万円〜数千万円クラス。製造ラインの自動化・省力化設備が対象です。中小企業向けですが、使い勝手が良い枠です。(ものづくり補助金は、令和8年度より『新事業進出・ものづくり補助金』に統合予定) 
フードテック実証・CFP算定支援 数百万円〜2,000万円クラス。新技術の実証や、CFP(カーボンフットプリント。製品ができるまでに出るCO2の量)の算定などが対象です。第4回で触れた「みどり戦略」の文脈で評価されます。 

7 食品メーカーの補助金活用マップ 

最後に、自社の優先課題に応じた補助金の選び方を、下の表に整理しました。 

自社の優先課題 補助金の選び方(ステップ) 
輸出を伸ばしたい まずHACCPハードで製造施設を輸出対応に → 次にサプライチェーン連結強化や食品等物流合理化で輸出物流を整備 
国産原料を増やしたい 産地連携支援で産地との関係構築と設備投資 → 「国産原料10%以上増加」の要件を満たす計画を策定 
省人化・効率化を進めたい ものづくり補助金や省人化設備枠で製造ラインを自動化 → 食品等物流合理化で物流のDX・標準化 
環境対応を強化したい CFP算定支援で自社製品の環境負荷を見える化 → 他の補助金申請時に「GHG削減効果」を加点要素として活用 
複合的に取り組みたい HACCPハード+産地連携支援+物流合理化を組み合わせ → 「国産原料×輸出対応×サプライチェーン効率化」の一気通貫構想 

【まとめ】第6回:食品メーカーが「直接使える」大型枠は2つ

  • 食品メーカーが主体で申請できる大型枠は「HACCPハード」と「産地連携支援」の2つです 
  • HACCPハード:上限6億円・補助率2分の1、輸出対応の施設整備に最適です 
  • 産地連携支援:予算枠49億円・補助率2分の1、国産原料の調達強化に最適です 
  • 両者は目的が異なるため使い分けが明確で、組み合わせて使うことも可能です 
  • 中〜小規模枠(物流合理化、ものづくり補助金、CFP算定支援など)も併せて検討しましょう 
  • 自社の優先課題(輸出? 国産化? 省人化? 環境?)に応じて補助金を選ぶことが大切です 
📖 次回(第7回・最終回)予告 

次回(最終回)は、ここまでの6回を踏まえて、「あなたの会社は『引っ張る側』か『乗る側』か?」という問いを考えます。令和7年度補正が示した「構造を変える5年」のなかで、食品メーカーがどのような戦略で補助金を活用すべきか、全体像を整理します。 

✍️ この記事を書いた人

北條 竜太郎(ほうじょう りゅうたろう)|株式会社アカネサス 代表取締役

老舗どら焼きメーカー・茜丸を再建(22億円の債務を15年で完済)した経験から、

食品メーカー向けコンサルティング会社を設立。

補助金申請・工場設計・システム開発で食品製造業の成長を支援。

【会社実績】

・支援プロジェクト総事業費:363億円

・補助金採択額:126.5億円

・北海道から沖縄まで全国対応

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