【2027年度・令和9年度】桁が2つ違う、2つのフードテック予算〜フードテック補助金367.5億円の正体〜食品企業は「買い手」として関わる|オフテイク宣言とは何か


フードテックに367億円と聞いたが、うちの自動化にも使えるのでしょうか?



5.8億円と367.5億円、同じフードテックなのに何が違うのか…
2026年8月31日に公表された農林水産省の令和9年度概算要求には、「フードテック」という言葉のついた予算が2つあります。
フードテック活用食品産業効率化支援事業が5.8億円。スタートアップ日本成長戦略フードテック対策が367.5億円。桁が2つ違います。どちらも「フードテック成長戦略推進プログラム」(502.14億円、前年度1.17億円)という大枠のなかにあります。
大きな数字を見ると「これなら、うちの盛付ラインの自動化にも使えるのではないか」と思いたくなります。しかし、この2つはお金が出る相手も、出る対象も、まったく違います。取り違えたまま準備を進めると、半年を無駄にします。
本記事では、2つの予算の中身を具体的にほどいたうえで、食品企業がそれぞれにどう関わるのかを整理します。
- 【比較】2つのフードテック予算は、どこが違うのか
- 【5.8億円】人手が足りない工程を、機械に置き換える
- 【367.5億円】スタートアップの技術を「量産」まで引き上げる
- 【オフテイク宣言】食品企業が果たす役割
- 【公募時期】いつ始まりそうか|過去の基金事業からの予想
- 【準備】機械を探す前に、工程ごとの数字を取る
- 【FAQ】フードテック補助金についてよくある質問
- まとめ:金額の大きさと、自社との距離は別物
⚖️ 1. 【比較】2つのフードテック予算は、どこが違うのか
まず結論を1枚の表にします。
📊 2つのフードテック予算の比較
| フードテック活用 食品産業効率化支援事業 | スタートアップ日本成長戦略 フードテック対策 | |
|---|---|---|
| 要求額 | 5.8億円(資料上は新規) | 367.5億円(新規) |
| お金を受け取る主役 | 食品製造業・飲食業の事業者 | スタートアップ |
| 何に出るか | 人手が足りない工程を、AIやロボットの機械に置き換える費用 | 新しい技術を、試作の段階から量産して売れる段階まで引き上げる大規模な実証 |
| 1件あたり | 数千万円規模 (現行の近い事業は上限4,000万円・補助率1/2) | 上限50億円/10億円 補助率2/3以内(参加する大企業は1/3以内) |
| 食品企業の 関わり方 | 自社が申請者。設備を導入する | 技術を「買う・使う」と表明する側(オフテイク宣言)、または出資する側 |
| 自社の設備更新に 使えるか | 使える | 使えない |
| 公募時期の予想 | 2027年3月ごろ | 2027年夏〜秋に公募、年末ごろ採択 |
| 相談窓口 | 大臣官房新事業・食品産業部(飲食業分は外食・食文化課) | 農林水産技術会議事務局 研究推進課 |
自社工場の省力化投資を考えているなら、見るべきは5.8億円のほうです。367.5億円は、食品企業が主役になる予算ではありません。
🤖 2. 【5.8億円】人手が足りない工程を、機械に置き換える
フードテック活用食品産業効率化支援事業を一言でいうと、「人手が足りない工程を、AIやロボットの機械に置き換える費用の一部を補助する」事業です。
要求額は5.8億円。概算要求の資料上は「前年度 ー」、つまり新規事業として立っています。ただし実質的な前身は「食品産業省力化投資促進事業」(令和8年度当初0.71億円、令和7年度補正3.0億円)で、これを再編・拡充したものと読めます。金額で見れば約8倍です。
📊 3つの支援区分
来年度の資料に載っている支援は、次の3つです。
| 支援区分 | 想定される中身 |
|---|---|
| ① 業種横断型プロジェクト支援 | 食品企業と機械メーカーなどが組んで、新しい省力化技術を開発し、実際の工場で試す取組。「市販の盛付ロボットでは、うちの惣菜の形に対応できない。だから機械メーカーと専用機を試作する」といった使い方 |
| ② 食品製造業生産性向上モデル支援 | 食品工場に既存の省力化機械を導入する取組。業界のお手本になる事例をつくることが期待される |
| ③ 飲食業生産性向上モデル支援 | 令和8年度から動いている飲食業向け支援を引き継ぐ区分。店舗やセントラルキッチンの調理・洗浄・盛付などの機械化。現行の飲食業支援(飲食業労働生産性向上推進事業)は定額10/10・1領域あたり100〜500万円・設備はリース限定で、製造業向けとは条件が別物 |
③の飲食業向け支援は令和8年度からすでに動いており、来年度はこれが3区分の一つとして位置づけられます。外食チェーンやセントラルキッチンを持つ会社にとっては、すでに開いている入口です。ただし現行の飲食業向け支援は補助の形が製造業向けと違うため、条件は区分ごとに確認してください。
もう一つ、見落とせない前提があります。②食品製造業生産性向上モデル支援と③飲食業生産性向上モデル支援は、食料システム法の計画認定を受けていることが要件とされています(①業種横断型プロジェクト支援は、認定があれば加点)。5.8億円を狙うなら、機械選びより先に、この認定の準備が最初の関門になります。ただし、これは概算要求段階の書きぶりです。最終的な要件は公募要領で確定します。


現行の近い事業では、何に出ているか
令和9年度の補助率と上限額は、概算要求の資料には書かれていません。そこで、いま動いている近い事業を見ると、何に使えるのかが具体的に分かります。
現行の「省力化技術導入支援事業」(令和7年度補正)では、上限4,000万円・補助率2分の1で、次のような機械が「対象となる機械設備のイメージ」として挙げられています。
- 弁当・総菜用盛付ロボット
- 自動パン粉付け機
- 多層包あん成形機
- 製品自動箱詰め装置
- AI付き製品検品用X線センサーシステム
たとえば、盛付ラインに5人張り付いている工場が、8,000万円の盛付ロボットを入れる。その半分、4,000万円までが補助される、というイメージです。補助の対象になる機械設備には、「生産効率を対前年比3%/年以上高めるもの」という要件が付いています(「販売開始後4年未満」とセットの、機械設備側の条件です)。あわせて、業界の省力化の「お手本」になる取組であることが求められます。
総額5.8億円は、全国の工場や店舗の機械化を広く支える規模ではありません。1件4,000万円としても、単純計算で十数件です。
「お手本になる会社」を選んで支援する事業です。ここ一本に賭けるのではなく、中小企業省力化投資補助金など経産省系の制度と並べて検討してください。
※機械の例と補助条件は、現行の近い事業のものです。来年度の条件は公募要領で確認が必要です。金額の例は考え方を示すためのものです。
🚀 3. 【367.5億円】スタートアップの技術を「量産」まで引き上げる
もう一方の367.5億円は、事業名を「フードテック・スタートアップ大規模技術実証支援事業」といいます(名称の近い既存の「スタートアップ大規模技術実証支援事業」とは別の事業です)。
一言でいえば、研究室の段階にある技術を、量産して売れる段階まで引き上げるための大規模な実証です。
対象は4分野
- 植物工場
- 陸上養殖
- 食品機械
- 新規食品
📊 2つの支援タイプ
| タイプ | 1件あたり上限 | 何に出るか/条件 |
|---|---|---|
| 事業化支援実証タイプ | 50億円 | 実用化に近い技術を、大規模な実証で量産体制の確立までもっていく取組。技術や商品の「買い手」の意思表示(オフテイク宣言)が必須 |
| 事業化誘導実証タイプ | 10億円 | その手前の、技術の実証や技術要素の研究開発。オフテイク宣言があれば優先される |
どちらも補助率は3分の2以内(コンソーシアムに参画する大企業は3分の1以内)、期間は最長5年の基金方式です。
さらに、ベンチャーキャピタルや民間企業等からの出資を前提に、その出資額の最大2倍まで補助する「マッチングファンド方式」が入っています。民間のお金が入る案件に、国が上乗せする設計です。


実施主体はスタートアップ等。問い合わせ先も農林水産技術会議事務局の研究推進課で、他の食品産業向け補助金とは所管が違います。
🤝 4. 【オフテイク宣言】食品企業が果たす役割
では、食品企業はこの367.5億円にどう関わるのか。鍵になるのが「オフテイク宣言」です。
オフテイク宣言とは
技術や商品を買う側・使う側が、意向表明書や基本合意書などで、「この技術がこの状態になれば、こういう形で導入・取引する」という意思を示すものです。売買契約までは求められていません。
事業化支援実証タイプ(上限50億円)では、この宣言が必須要件になっています。つまり、買い手がいない技術には50億円が出ない、という設計です。
📊 食品企業が担う3つの役割
| 役割 | やること | 具体例 |
|---|---|---|
| 買い手として | 技術や商品を「導入する」「取引する」と意思表示する | 植物工場のスタートアップが量産実証をするとき、「その野菜を、うちの工場の原料として使う」と表明する惣菜メーカー |
| 使い手として | 完成した設備を自社工場に導入すると表明する | 食品機械のスタートアップが新しい装置を実証するとき、「完成したら、うちの工場に入れる」と表明する食品メーカー |
| 出資者として | スタートアップに出資し、マッチングファンドの原資になる | 事業会社としてスタートアップに出資する。その出資額の最大2倍まで国の補助が付く |
自社工場の設備更新に使える予算ではありません。それでも、「こういう機械があれば、うちは必ず買う」と言える会社は、スタートアップにとって何より心強い相手になります。
見方を変えれば、自社が欲しい機械を、開発費の3分の2を国に持ってもらいながら作ってもらう仕組みだとも言えます。
※上記の関わり方は、制度の仕組みから考えられる例です。要件は公募要領で確認が必要です。
📅 5. 【公募時期】いつ始まりそうか|過去の基金事業からの予想
5.8億円のほう:2027年3月ごろ
現行の近い事業である「業種横断型技術開発実証事業」は、令和8年度当初予算で2026年3月2日に公募が始まりました。当初予算の事業は、予算の成立(3月)と前後して公募が始まることが多く、来年度も同じ時期と見ています。
367.5億円のほう:2027年夏〜秋に公募、年末ごろ採択
こちらは新しく基金をつくる事業なので、時間がかかると見ています。
参考になるのが、農水省の「フェーズ3基金事業」(正式名称は農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業。SBIRフェーズ3の農水省分で、フードテック専用の基金ではありません)の先例です。令和4年度第2次補正予算(2022年12月成立)で措置されたこの基金は、公募が2023年8月25日から10月6日、採択の発表が2023年12月28日でした。予算の成立から公募開始まで、約9か月かかっています。
同じペースなら、2027年3月の予算成立から数えて、公募は2027年夏から秋、採択は年末ごろになります。
もう一つ、設計のよく似た先例として「スタートアップ大規模技術実証支援事業」がすでに動いています。令和7年度補正20.7億円・令和8年度当初10億円、1者あたり最大3.2億円で、補助率もマッチングファンド方式も同じ設計です。国が事務局を公募し(2025年12月26日〜2026年1月29日)、その事務局がスタートアップを公募する(2026年3月31日〜4月30日)二段構えで、採択は2026年6月16日に5社が発表されました。367.5億円の事業は、この方式を大規模に拡充したものと読めます。


公募が夏だからといって、夏まで何もしなくていいわけではありません。オフテイク宣言は、思いついてすぐ出せるものではないからです。
どの技術なら「うちは買う」と言えるのか。その技術が完成したとき、自社のどの工程に入るのか。社内で合意を取るには時間がかかります。この秋から考え始めておくのが得策です。
📏 6. 【準備】機械を探す前に、工程ごとの数字を取る
人手不足に悩む会社が、この秋にやるべきことは何か。私のおすすめは、機械を探す前に、工程ごとの数字を取ることです。
盛り付け、包装、洗浄、搬送、発注。それぞれの工程に一日延べ何時間かかっていて、何時間減らしたいのか。たとえば盛り付けに毎日延べ20時間かかっているなら、機械を入れて何時間減らせるかを測ります。
順番を逆にすると、失敗します。展示会で見た機械に合わせて工程を考えると、調理だけ速くなって洗浄や包装で詰まる、ということが起きるからです。
📊 工程ごとの棚卸し記入シート
| 工程 | 現在の作業時間 (1日・延べ) | 目標 | 想定する手段 |
|---|---|---|---|
| 盛り付け | 時間 | 時間削減 | |
| 包装 | 時間 | 時間削減 | |
| 洗浄 | 時間 | 時間削減 | |
| 搬送・出荷 | 時間 | 時間削減 | |
| 検品 | 時間 | 時間削減 | |
| 発注・事務 | 時間 | 時間削減 |
現行の導入支援が対象機械設備に「生産効率を対前年比3%/年以上高めるもの」という要件を置いているように、省力化の補助金は、数字で効果を示せる会社に出ます。そしてこの数字は、どの補助金を使う場合も、使わない場合も、投資の判断に必ず役立ちます。
※時間は、考え方を示すための例です。
❓ 7. 【FAQ】フードテック補助金についてよくある質問
- Q1. 367.5億円の予算を、自社の工場の自動化に使えますか?
-
使えません。この予算はスタートアップの技術実証に出るもので、食品企業の設備更新は対象外です。自社工場の省力化投資なら、5.8億円のフードテック活用食品産業効率化支援事業か、経産省の中小企業省力化投資補助金を検討してください。
- Q2. オフテイク宣言をすると、買う義務が生じますか?
-
売買契約までは求められていません。「この技術がこの状態になれば、こういう形で導入・取引する」という意思表示です。ただし、実証の成否に関わる約束なので、社内で合意のうえ出すべきものです。
- Q3. 飲食業も対象になるのは、どちらの予算ですか?
-
5.8億円のほうです。飲食業向けの支援は令和8年度から動いており(飲食業労働生産性向上推進事業)、来年度はこれが「飲食業生産性向上モデル支援」という区分として位置づけられる見込みです。店舗やセントラルキッチンの調理・洗浄・盛付などの機械化が対象です。ただし現行の飲食業支援は定額10/10・1領域あたり100〜500万円・リース限定で、製造業向けとは条件が違います。
- Q4. 5.8億円の補助率と上限額はいくらですか?
-
令和9年度の条件は、概算要求の資料には記載がありません。現行の近い事業である省力化技術導入支援事業は、上限4,000万円・補助率2分の1です。来年度の公募要領で確認が必要です。
- Q5. 経産省の省力化投資補助金と、どちらを使うべきですか?
-
投資額と、お手本性で判断してください。中小企業省力化投資補助金の一般型は、従業員規模により補助上限が750万円から8,000万円(大幅賃上げ時は区分ごとに上乗せされ、101人以上なら最大1億円)、補助率は2分の1(小規模事業者は3分の2)です。直近の第6回では1,176件が採択されており、件数も多く出ています(第8回の申請受付は2026年10月16日まで)。一方フードテック側は、件数は少ないものの、業界のお手本になる先進的な取組や、機械メーカーと組んだ試作開発に向いています。
- Q6. マッチングファンド方式とは何ですか?
-
ベンチャーキャピタルや民間企業等からの出資を前提に、その出資額の最大2倍まで国が補助する仕組みです。民間が先にリスクを取った案件に、国が上乗せする設計になっています。
📝 まとめ:金額の大きさと、自社との距離は別物
フードテックという同じ言葉で括られていても、5.8億円と367.5億円は別の制度です。金額が大きいほうが自社に関係がありそうに見えますが、実際には逆で、自社工場の省力化に使えるのは小さいほうです。
補助金を読むときは、金額の前に「誰にお金が出るのか」を見てください。主役が誰かが分かれば、自社がどう関わるべきかも見えてきます。
そして367.5億円のほうも、食品企業にとって無関係ではありません。買い手として名乗りを上げることで、自社が欲しい機械の開発を後押しできるからです。人手不足の現場をいちばんよく知っているのは、機械メーカーでも役所でもなく、現場を持つ食品企業です。






✓ 令和9年度の「フードテック」予算は2つ。自社工場の省力化に使えるのは、小さいほうの5.8億円(フードテック活用食品産業効率化支援事業)
✓ 367.5億円はスタートアップの大規模実証に出る予算。食品企業は「買い手」=オフテイク宣言をする側、または出資する側として関わる
✓ 5.8億円の②③区分は食料システム法の計画認定が要件。機械を探す前に、工程ごとの数字を取り、認定の準備から始める
「主要9制度の早見表と準備カレンダー」をA4・2枚にまとめました。工場長や経理のご担当者にそのまま回覧できる形式です。
「2027年度の投資に、どの制度が使えるか知りたい」
「この秋に何から手を付けるべきか、順番を整理したい」
という方は、ぜひお気軽にご相談ください。 補助金の最適な設計を30分で整理する無料オンライン相談を実施中です。
(注)金額は2026年8月末に公表された令和9年度概算要求の要求額で、成立した予算ではありません。「現行」の事業は令和7年度補正・令和8年度の公募内容で、来年度の支援内容をそのまま示すものではありません。公募時期は筆者の予想です。支援区分の名称や、計画認定の要件化を含む諸要件も概算要求段階のものであり、確定は公募要領によります。






